“飛び地”で始まった教育事業
──はじめに、山本さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
山本将裕氏(以下、山本):2010年にNTT東日本に入社し、法人営業を行っていました。その後、ICTで新規事業を立ち上げる部署へ異動したのを機に、NTTグループ内組織活性有志活動「O‑Den」や、大企業の若手・中堅社員を中心とした企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」など、社内外のネットワーク作りに力を入れるようになりました。そして2017年にはNTT東日本アクセラレータープログラムを発足させ、様々なスタートアップとのオープンイノベーションに取り組むようになりました。
プログラムは億円単位の売上まで成長したのですが、終わりを迎え、2020年からはフリーランスとして企業の新規事業開発を支援する側に回りました。その後以前より関係性もあったNTTドコモの新規事業部署に中途採用で参画することになったんです。
そもそも新規事業開発を支援する目的で入ったこともあり、当初は社内起業家の育成を目指す企業内大学「ドコモアカデミー」の設立に携わりました。その後、自分でも新規事業として中高生向けオンラインキャリア探究サービス「はたらく部」を立ち上げ、2024年にNTTドコモからスピンアウトした後は、RePlayceの代表として「はたらく部」と通信制高校サポート校「HR高等学院」を運営しています。

──「はたらく部」とはどのような事業ですか。
山本:中高生がオンライン上のバーチャル空間で社会や仕事を知ることで、キャリア観を醸成したり、コミュニケーション能力や共創力などの非認知能力を向上させたりできるサービスです。中高生15~20人に社会人が1人付き、放課後の部活のような形で実施しているので、「はたらく部」と命名しました。
──なぜ通信事業をドメインとするNTTドコモで教育事業の立ち上げに至ったのでしょうか。
山本:39works(現:docomo STARTUP)という新規事業の検証ができる制度があり、いわゆる「飛び地」領域でも応募できたんです。そして「イノベーションが求められている業界はどこか」と後輩社員とブレストしていた時に、候補に挙がったのが教育業界でした。早速、都立高校で教師をしていた知人に話を聞きに行ったところ、「キャリア教育が進まない」という相談を受け、「ならばその領域で事業を考えてみよう」と決めました。
実際、日本の中高生たちは社会との接点が少ないことがわかっています。RePlayceが2024年4月に発表した「学校生活・キャリア教育に関わる意識調査」では、家族や親戚、教師以外に進路相談できる中高生は5.5%という結果が出ており、仕事に対してネガティブなイメージや不安を抱えている中高生も少なくありません。だからこそ、社会で働くことに関心を持つためのサービスにはニーズがあったと言えます。
──中高生をターゲットにしたことには、何か理由があるのですか。
山本:小学生については習い事市場が飽和していますが、中高生に関しては、習い事の代わりを果たしてきた部活動が地域移行などで大きく変化し、新たな市場が生まれるのではないかと考えました。実際、「はたらく部」は習い事感覚で参加している利用者が多いですね。
RePlayce 山本氏も登壇!
6月13日に開催される「Biz/Zine Day 2025 June」では、本記事でお話を伺った山本氏も登壇。「docomo STARTUP」の責任者を務める原尚史氏とともに、大企業からの起業家の輩出についてディスカッションします。セッションでは参加者からの質問にもお答えする予定です。オンライン(ライブ配信)とスタジオ観覧のハイブリッド開催です。ぜひご参加ください!