「利益重視」への転換を阻むバックオフィスの課題
──はじめに雨風太陽についてご紹介いただけますか。
白井聡氏(以下、白井):雨風太陽は「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げる「関係人口カンパニー」です。都市と地方の間を行き来する関係人口を生み出すための事業を複数手がけています。
主な事業領域は食品、自治体、旅行の3つです。食品事業では、全国の農家・漁師が消費者に直接商品を販売できる「ポケットマルシェ」やふるさと納税サービス「ポケマルふるさと納税」などを運営しています。自治体事業では、農作物の販路開拓支援や移住促進支援などの自治体向けソリューションを提供。さらに旅行事業では、「旅」と「学び」を掛け合わせた「ポケマルおやこ地方留学」、農泊・民泊などのユニークな宿泊施設を掲載する宿泊予約サイト「STAY JAPAN」の運営を行っています。
関係人口の創出を軸に、CtoCプラットフォームの運営や自治体支援など、幅広いビジネスを手がけているのが特徴です。

公認会計士として監査法人や投資ファンドなどで勤務したのち、2024年に雨風太陽に入社。経理財務部の部長を務める
──雨風太陽では「freee販売」をはじめフリー社の製品を複数導入してバックオフィス改革を行ったと伺っています。導入の背景にどのような課題があったのでしょうか。
白井:まず大きな課題として、経理の体制強化が求められていました。2023年12月の赤字上場からそろそろ2年が経とうとしており、雨風太陽では黒字化が喫緊の課題になっています。昨年度は黒字決算の予測でしたが、結果的には下方修正を余儀なくされました。
その要因を分析したところ、経営管理の体制を売上重視から利益重視に転換する必要があるという認識に至りました。ただ、従来の体制では、案件ごとの収支管理など粒度の細かい管理が難しく、何らかの形で経営管理のあり方を見直す必要がありました。
石本和真氏(以下、石本):粒度の細かい管理が難しかったのは、販売管理システムと会計システムの連携が十分ではなかったことに起因します。従来、私たちは自治体事業の販売管理と調達管理を、別のシステムで行っていました。
その理由は、自治体事業のお金の流れが他の事業と異なるからです。地方自治体は期初に年間予算が決定し、期末に精算を行います。そのため、売上を他の事業と同じ仕組みで管理するのが難しく、結果的に販売管理システムと会計システムを分けざるを得ませんでした。

2021年に営業職として雨風太陽に入社。2023年12月の東証グロース市場上場を機に経理財務部に異動し、経理やIRを担当
しかし、販売管理システムと会計システムを併用することで、当然ながら入力や転記、突き合わせなどの定型作業が増え、経理財務部のリソースを圧迫します。さらに、システム間のAPI連携ができなかったため、案件ごとの詳細な分析をタイムリーに行えない、という課題も抱えていました。
これらの課題を解決するため、販売管理の情報を仔細に管理できるfreee販売の導入を決め、以前から利用していたfreee会計などと連携することで、販売管理と経理の一元化を目指しました。
横山博史氏(以下、横山):私はデジタルメディアや広告などの業種の企業を数多く担当していますが「事業のフェーズによってあるべき管理体制が変わる」という話を、往々にして伺います。
事業のフェーズについては「拡大期」と「成熟期」の2つです。拡大期にはトップラインの向上に向けて売上重視の経営をしなければいけない一方、組織の成熟期にはコスト削減や業務効率化などの体制強化が求められます。その観点で言えば、雨風太陽さんは今まさに組織の成熟期を迎えつつあるのだと思います。