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入山教授が示す、生成AI時代における経営企画の再定義/丸井やリクルートが挑むFP&A組織の壁

Loglass経営企画サミット2025 レポート

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“動く経営企画”にしか取れない、探索の失敗リスク

 さらに、生成AIには担えないもう1つの役割として、入山氏は「失敗の責任を取ること」を挙げる。

「生成AIの基本的な仕組みであるディープラーニング(深層学習)は、端的に言えば『自動的に失敗を減らす仕組み』です。そのなかでは、成功の見込みはあっても失敗のリスクをはらむアイデアは自然と排除されます。つまり、そうしたアイデアは人間が実行するしかありません。失敗のリスクはあっても、責任を取って実行してみる。それがこれからのリーダーや経営企画の役目です。もちろん『責任を取る』といっても、失敗に対する説明責任を果たすということです」(入山氏)

 続いて入山氏は、経営共創基盤の創業者の冨山和彦氏が昨年出版した『ホワイトカラー消滅』(NHK出版新書)の話題に触れた。同書では、人手不足の加速やデジタル化の進展に伴い、産業プロセスの上流と下流に付加価値がスライドする「スマイルカーブ現象」が発生すると主張している。

 この見解に入山氏も賛同し、これまで中間業務を担ってきた経営企画も、より経営の意思決定に近い戦略策定などの上流か、より現場に近い顧客接点や製造現場などの下流に業務をシフトしていかなければいけないとして、自身の講演を締め括った。

スマイルカーブ現象で重要となる「感情労働」

斉藤知明
株式会社ログラス 執行役員 CBDO 斉藤知明氏

 続いて、入山氏とモデレーターの斉藤氏とのトークセッションが実施された。直前の入山氏の講演内容に呼応して斉藤氏は、「経営企画におけるスマイルカーブ現象」に焦点を当てた。従来、中間業務を担ってきた経営企画が、現場の業務に即応するのは容易ではない。経営企画が下流工程の仕事に適応するにはどのようなアプローチが望ましいかと尋ねた。

 これに対して、入山氏は「感情労働」をポイントに挙げた。DXブームを経て、昨今の飲食業や小売業の店舗ではデジタル化が進んでいる。食事の提供やレジ打ちは省人化され、現場業務の力点も接客や接遇といった感情労働にシフトしつつある。こうした環境に馴染むには、現場の人々に親しみを持って接し、信頼関係を構築するコミュニケーション能力が必要だ。

 入山氏は「経営企画の人は、往々にして、現場の人々から『偉そう』と見られています」として、現場とのフラットな関係性の大切さを強調する。たとえば、入山氏と知己のあるコープさっぽろCIOの長谷川秀樹氏(東急ハンズ、メルカリなどでCIOを歴任)は、コープさっぽろへの着任に際して店鋪業務を率先して経験したといったエピソードを紹介した。

未来が予測できない時代の「納得性」とは

 また、入山氏は、現場の人々の共感を喚起して巻き込んでいくアプローチとして「納得性」の重要さを説いた。

「これはセンスメイキング理論と呼ばれるものですが、端的言えば『正確性(Accuracy)』よりも『納得性(Plausibility)』が重要だということです。納得性とは、つまり「腹落ち」ですね。現代の不確実性の高い環境下では、正確性の高い予測を立てたところであまり意味がありません。予測はほぼ全て外れてしまうでしょうから」(入山氏)

 未来予測よりも「20~30年後にはこんな未来が訪れていそうだ」といった、ざっくりとした方向性を組織全体で共有しているほうが強い。そうした共感や理解を得るには、多くの人の納得感を醸成するメッセージングが必要になる。

 さらに、「知の探索」を継続するためにも「納得性」は欠かせない。「知の探索」には失敗のリスクが付き物だが、組織内に「納得感」を醸成しておくことで取り組みの継続性を担保でき、頓挫を回避できるのだという。

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求められる「ドメインナレッジ」「変化の習慣化」「経路依存の脱却」

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ログラス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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