新規事業のマネジメントに欠かせない「組織の癖」とは?
ここからは第3回以降のテーマにも関わりますが、新規事業創出では、既存事業のマネジメントとは異なる考え方が求められます。私がお勧めするのは、「組織の癖」に応じて取るべきマネジメントやプロセスの設計を変えることです。
「組織の癖」には様々な捉え方がありますが、こと新規事業のマネジメントでは、たとえば以下のような分類ができます。
- 「素早く小回りよく動くのが得意」な組織
- 「ゆっくりだが大きく動くのが得意」な組織
- 「既存事業の縛りが強く新たな取り組みがしにくい」組織
これによって、現場からボトムアップで進めるべきか、トップダウンで進めるべきか、場合によっては既存事業から組織を分離させ、プロセスよりも結果でマネジメントするといったアプローチも考えられます。
また、「組織の癖」を見出すためには、自社の内実や歴史を学び、検証することも欠かせません。会社や事業の成り立ちを振り返ったり、過去の新規事業の成功・失敗事例を把握したりするのも有効でしょう。また、現在の経営陣の思いや考え方をヒアリングして言語化することに加え、社外のステークホルダーから客観的な意見を聞くのも参考になります。
ここで重視したいのが、長い時間軸で捉えるということです。多くの大企業では、組織は経営者よりも長く存続します。そのため、一定期間の役割を担う経営陣が変わるだけでは変化しない、目に見えにくい様々な癖が根付いているのです。日本企業ではその傾向が特に強いため、より長い時間軸の中で自社を深く理解することが重要です。
新規事業のマネジメントを行う上では、自社の癖を理解した上で取り組む必要があり、それによって目標設定のあり方も変わってきます。あなたの会社は「素早く小回りよく動く」ことが得意でしょうか。それとも「ゆっくりだが大きく動く」ことが得意でしょうか。
第3回となる次回は、これらの違いによって新規事業のマネジメント手法を根本的に変える必要性と、これまでの知見に基づく3つのマネジメント──トップダウン型、ボトムアップ型、出島型──に応じた取り組み方を解説します。