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企業価値向上のためのFP&A

キリングループの事業ポートフォリオ変革を支えるFP&A──コーポレートと事業会社の「戦略対話」とは?

ゲスト:キリンホールディングス 財務戦略部長 松尾英史氏、経営企画部 主査 勝田龍介氏

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 日本企業においてFP&A(Financial Planning & Analysis)の導入や、経営企画と財務部門の連携強化が進む中、先進的な取り組みで注目されるのがキリンホールディングスである。同社は従来の固定的な中期経営計画(中計)を事実上廃止し、長期視点に基づく「計画ローリング」へと移行した。財務戦略部と経営企画部が一体となって密に連携し、コーポレートと事業会社の「戦略対話」を通じて事業価値の最大化を図るその手法は、激変する市場環境での企業経営の新たな解として示唆に富んでいる。本取材では、キリンホールディングス 財務戦略部長の松尾英史氏、経営企画部 主査の勝田龍介氏に、ストラットコンサルティング 代表・FP&Aアドバイザーの池側千絵氏がインタビューを行った。固定的な計画からアジャイルな予測への転換、事業会社との対話プロセス、そして「Analysis(分析)」だけでなく「Action(行動)」までを担うFP&A人財の育成まで、キリンが推進する経営管理変革の全貌に迫る。

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長期経営構想で示されたポートフォリオ変革とFP&A

池側千絵氏(以下、池側):本日はキリンホールディングスにおける経営管理の変革、その中心的な活動でもあるFP&A組織と人財育成について伺います。まずは、お二人の現在の役割とバックグラウンドについてお聞かせください。

松尾英史氏(以下、松尾):私のキャリアは予算決算業務からスタートし、資金調達などの財務、M&Aや事業会社のCFOといった事業、さらにはIR(インベスター・リレーションズ)を経験してきました。「ファイナンス」「事業経営」「コミュニケーション」という3つの軸でキャリアを形成してきました。

 現在はホールディングスの財務戦略部長として、財務や経理にとどまらず、経営企画などのコーポレート部門と事業子会社とともに戦略を構築・実行していく役割を担っています。具体的には、「Strategy(戦略)」「Finance(財務)」そして「DX(デジタル)」の3要素を掛け合わせ、企業価値向上にフォーカスしたFP&A組織の活動を統括しております。

松尾英史
キリンホールディングス株式会社 財務戦略部長 松尾英史氏

勝田龍介氏(以下、勝田):私は現在、経営企画部で「ストラテジー&プランニング(企画チーム)」のリーダーを務めています。グループの計画策定を担当しており、長期経営構想やそれを具現化するための年度計画策定・モニタリングが主な業務です。

 私の経歴は2008年の入社以来、長らくキリンビールの営業として主に業務用市場を担当していました。4年ほど前に本社営業部の戦略部門へ異動し、現在のホールディングス経営企画部には2024年の10月に着任しました。叩き上げの現場感覚を武器として、グループ戦略の立案に取り組んでいます。

勝田龍介
キリンホールディングス株式会社 経営企画部 主査 勝田龍介氏

池側:ありがとうございます。経営企画部の方とファイナンス(財務戦略部)の方とが一緒に経営管理の高度化についてお話いただける素晴らしい機会です。それでは、FP&A機能の強化など、経営管理プロセスの変革が始まったきっかけについて教えてください。

池側千絵
【聞き手】ストラットコンサルティング株式会社 代表・FP&Aアドバイザー 池側千絵氏

松尾:大きな転換点は、2019年に発表した長期経営構想「KV2027」の頃です。国内人口の減少やアルコールへの社会的な視線の厳格化が予測される中、私たちはコアコンピタンスである「発酵・バイオテクノロジー」を軸に、事業構造を大きく変革する必要がありました。

 具体的には、一般消費ニーズに応える「食領域(酒類・飲料)」、医療ニーズに応える「医領域(医薬品)」に加え、その中間にある予防・未病段階の健康ニーズに応える「ヘルスサイエンス領域」の3本柱で成長していく方針を打ち出しました。

勝田:当然ながら、事業ポートフォリオ変革を成し遂げるためには、ヘルスサイエンス事業のような新規領域への投資原資を確実に確保する必要があります。しかし、2019年の新型コロナウイルスの流行では、まさにそのグループ収益基盤を支える食領域事業が大打撃を受けました。さらに、AIをはじめとするテクノロジーの急速な発展や地政学リスクの高まりなど、今後も環境変化は加速する一方です。こうした先行き不透明な時代において、3年、5年と固定された計画では変化に即応できないことを痛感しました。

 そこで、中長期的なゴールからのバックキャスト(逆算)を行うとともに、足元の内外環境の変化を敏速に捉えることで、よりアジャイルに計画を変更し、戦略実行力を高めることを目指しました。具体的には、従来の3ヵ年固定の中期経営計画から、常に次の3年先を見据えて毎年計画をローリングする策定プロセスへと移行しています。

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コーポレートと事業をつなぐ「戦略対話」

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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