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事業計画とは検証と学習により作り直すもの──木村義弘氏が語る「収益構造の分解」によるPDCAサイクル

登壇者:株式会社プロフィナンス CEO 木村義弘氏

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経営と現場をつなぐPDCAは「螺旋(らせん)」で回す

 木村氏の「収益構造分解理論」は、計画策定(Plan)のみならず、「予実管理」(CheckとAction)で真価を発揮する。

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 「予実管理を何のためにやっていますか?」と問われ、「やらなければならないから」と答える組織は、「単純にPとDとCとAを順番にやっているだけで、PDCAが回っていない」と木村氏は断言する。

「科学実験の『再現性』と同じで、PDCAを回すとは、サイクルを回すごとに『より良いP(計画)』になっていくことです。品質管理の大家W・エドワード・デミング博士も『PDCAは螺旋である』と言っています」

 「収益構造」なき予実管理は、「売上1,000万円目標、結果900万円」の比較しかできず、PDCAの螺旋は上昇していかないのだ。

 さらに木村氏は、両者の「使用言語」の違いによって引き起こされるすれ違いを指摘する。たとえば、経営陣は『人件費を抑えろ!』と言う一方で、現場部門では『商談数を増やすために人が要る!』と意見が食い違う。なぜ、このようなすれ違いが起きるのか。

「経営陣(経営管理側)は『勘定科目』で考え、現場部門(事業側)は『事業変数(KPI)』で考えています。立場・視点の違いによって、使う言語が違うから伝わらないのです。同じ目的に向かって、構造上同じということが認識できたらこのすれ違いはなくなります」

 この「翻訳」の役割を果たすのが、「ROICツリー」と現場の「KPIツリー」の接続だ。木村氏はこれを「共通構造認識」と呼び、組織の壁を越えて実行力を高める鍵だと強調した。

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日本のGDPを10%成長させる「品質管理」の逆襲

 セミナー終盤、木村氏の視座は日本経済全体へと広がる。この「収益構造分解」と「KPI管理」は、既存事業のグロースにも絶大な効果を発揮する。

「操作可能な変数と、操作不能な変数を見極め、リソースを前者に集中投下する。この小さな改善の積み重ねが、複利計算でトップラインの10~20%成長を生み出すのです」

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 そして木村氏は、この思考法を「実はできる人は自然にやっていた」としたうえで、日本全体に広めることが自らのミッションでもあると語る。

 この野心の背景には確かな洞察がある。この考え方の源流は実は日本にあり、それは同氏が学んだ品質管理だ。木村氏が提唱する「収益構造分解」とは、日本が誇った「品質管理」の思想を、現代のビジネス言語で“再発明”する試みとも言える。

「かつて“Japan as No.1”と呼ばれた頃、米国は日本の『TQC(Total Quality Control):全社的品質管理』を研究し、『シックスシグマ』などの名で営業や経営管理にまで“全社展開”して、今のデータドリブン経営の礎を築いたのです。そもそもの源流は日本のお家芸である、『品質管理』です。だから我々、日本企業が得意な領域だと考えています」

読者への示唆:計画は「達成」するな、「遂行」せよ

 最後に、質疑応答での核心を突くメッセージを紹介したい。「計画は“達成”するものではなく、“遂行”するもの」という一節の真意を問われた木村氏は、こう答えた。

「“達成”が目的化すると、『達成できそうな低い計画』しか作らなくなり、組織の成長が止まります。旅行の計画を立て、現地で“計画にはない行列の店”を見つけたら? きっと計画を変えて入りますよね。ビジネスも同じ。目的は“計画を守ること”ではなく、“旅行を楽しむこと(=事業を成功させること)”です」

 不確実な市場で新たな機会を見つけた時、即座に計画を見直し、リソースを再配分する。その「遂行」のプロセスを支える羅針盤こそが、「事業計画」という名の地図なのである。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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