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CVCの常識、非常識

なぜ住友商事のCVCは財務リターンを重視するのか──老舗が経験から導いた「テーマを決めない」投資戦略

ゲスト:住友商事 内村直哉氏、志津由彦氏

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CVCの「戦略リターン」と「財務リターン」の因果関係

小宮:社内の事業部側からのニーズ、いわゆる「マーケットイン」での投資活動はどうされていますか。

小宮昌人
株式会社Third Ecosystem 代表取締役CEO 小宮昌人(こみや まさひと)氏

内村:正直に申し上げますと、そこには試行錯誤の歴史がありました。かつては事業部の現場が欲している技術やサービスを吸い上げて投資先を見つける、マーケットイン的なアプローチをしていました。しかし、結論から言うと、それでは投資としての「成功(リターン)」は得られませんでした。

 その反省から、現在はアプローチを転換しています。「戦略的意義があるから投資する」のではなく、「投資対象として魅力的か(財務リターンが見込めるか)」をまず判断し、その上で戦略リターンを考えるという順序です。

小宮:あえて事業部に寄り添いすぎないようにされているのですね。多くのCVCが苦労する「財務リターン」を、御社がしっかりと出せている背景には何があるのでしょうか。

志津:CVCであっても、独立系VC(ベンチャーキャピタル)としての目線で成功する案件に入らなければなりません。事業シナジーを狙うにしても、スタートアップ自身が成長・成功しなければ絵に描いた餅になります。私のベンチャーキャピタリストとしての経験からも、「成長するスタートアップに投資する」ことが、必然的に財務リターンにつながると確信していますし、その上で戦略リターンを狙っていく考え方です。

 我々は、米国でも中国でも現地の人財をトップに据え、チームメンバーをキャピタリストとして育成し、現地のVCネットワークに深く入り込むことで、適正なソーシングや投資判断ができていると思います。また国内では投資活動のみならず、事業開発を行う目的でスタートアップや大企業との連携も積極的に進めています。

「テーマを決める」と最大の機会を逃すというCVCのジレンマ

小宮:グローバルでの意思決定について伺います。多くの日本企業は「今年は生成AI」「次は脱炭素」といったテーマ設定をしがちですが、御社はどうされていますか。

内村:大企業の「あるある」として、戦略テーマを決めたがる傾向がありますね。「アメリカならこのテーマ」と決めてかかりますが、経験上、それでうまくいった試しがありません。

 重要なのは、とにかく現場に出て、現地のキャピタリストと会話をし、今どのようなスタートアップが勃興しているのかという情報を足で稼ぐことです。したがって、我々はあえてテーマを決めず、誤解を恐れずに言えば「オポチュニスティック(機会追求的)」なスタンスを取っています。それくらい緩やかな方が、本当に良い案件に巡り合えます。

住友商事 CVC
資料提供:住友商事株式会社/クリックすると拡大します

小宮:テーマを絞らないことによるメリットは、具体的にどのような場面で感じますか。

内村:過去の苦い経験があります。かつて、テーマに合わないという理由で見送った案件の中に、今や世界的な巨大企業に成長した会社が含まれていました。「テーマに合わないから」という理由で機会を逃すことこそが、CVCにとって最大の損失です。

小宮:テーマを決めないとなると、社内での意思決定や説明責任が難しくなりませんか。

内村:最終的には担当者の「直感」に近い要素もありますが、論理的に「なぜこれが面白いか」を説明できる必要はあります。また、意思決定の仕組みとしては「投資委員会」を組成しています。1人の価値観で決めるのではなく、バックグラウンドの異なる3人以上のメンバーで、多角的な視点から議論して決定するプロセスを経ています。

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【成功事例】JVモデル「Dexterity」と代理店モデル「Plume」の進化

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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