情報精度の向上を図る「ダブルレポートライン」
池側:内部監査の仕組みを経営管理に持ち込んだのですね。また、「ダブルレポートライン(デュアルレポートライン)」の考え方も導入されていると伺いました。
加藤:ええ。各事業会社のFP&A責任者は、自社の社長だけでなく、グループCFOである私やグループFP&A部長の遠藤に対しても報告義務を持つ体制にしました。これにより、事業部側の「数字の抱え込み」を防ぎ、グループ全体で客観的な視点を担保できるようにしたのです。

遠藤:立ち上げ当初は、現場からは「監視されている」という抵抗感もあったように思います。しかし、私たちは単なる「チェック役」ではなく、データの壁を壊す「情報のハブ」になることを目指しました。コミュニケーションツールであるSlackのオープンチャンネルでリアルタイムに数字を共有する文化へとシフトしたのです。
池側:ツールによる可視化が、組織の振る舞いを変えたわけですね。
遠藤:そのとおりです。加藤からの鋭い問いかけが全員に見える化されることで、隠しごとができない「誠実な議論」が定着しました。現在は、過去の「結果の集計」に追われる組織から、現場の課題を因数分解し、未来の打ち手を提言する「意思決定のパートナー」へと変遷を遂げています。
加藤:この体制構築により、経営層と現場が同じデータに基づき、ロジックで対話できるようになったことが、投資家の信頼回復に向けた最大の転換点となりました。
池側:日本企業では、事業部の聖域に踏み込むのは難しいとされますが。
遠藤:立ち上げ当初は抵抗もありましたが、FP&Aが「単なるチェック役」ではなく「意思決定を助けるパートナー」であることを実績で示しました。データのアクセス権を共通化し、Slackなどでリアルタイムに情報を共有することで、事業部側も「FP&Aの分析があった方が、戦略の精度が上がる」と認識し始めています。

「隠せない・忘れない」仕組みの導入
池側:遠藤さんはグループ全体の横串を通す際、具体的にどのようなツールやコミュニケーションを重視されていますか。
遠藤:物理的なデータの壁を取り払うことはもちろんですが、それ以上に「情報のオープン化」を徹底しています。以前は都合の悪い数字が隠されたり、回答が遅れたりすることもありました。今はCFOの加藤や私、各事業のFP&A責任者が週に一度集まって、現在の業務進捗や重要案件などを議論する場を設けています。また、議論で出た質問にスピード感を持って対応するために、Slackのオープンチャンネルも積極的に利用しています。
池側:まさに「経営の神経細胞」がリアルタイムでつながっている状態ですね。
遠藤:はい。加藤からの鋭い質問や指示が全員に見えるため、「隠せない、そして忘れない」仕組みになっています(笑)。この透明性が、組織のスピード感を劇的に高めました。
