「商品軸」から「顧客軸」へ。予算計画策定の課題
池側:計画未達の要因を深掘りする中で、従来の「商品軸」の管理から「顧客軸」への転換が必要になったと伺いました。
加藤:当社は小売からスタートしたため、長年「何をいくら売ったか」という商品軸での管理が染み付いていました。しかし、現在の利益の柱であるフィンテック事業の本質は、LTV(顧客生涯価値)にあります。コロナ禍で消費行動が激変した際、商品軸のデータだけでは「なぜカード利用額が落ちているのか」「いつ戻るのか」が予測できませんでした。
池側:顧客一人ひとりの行動データに基づいた管理へアップデートしたわけですね。
加藤:はい。これは「経営管理のOSの入れ替え」とも言える取り組みです。FP&Aが主導し、カード会員数や稼働率、分割・リボ残高の推移などを「顧客軸」で精緻に分析しモニタリングフレームワークとして共有することで、ようやく再成長の道筋を数字で語れるようになりました。
PBR3~4倍への鍵は「人的資本投資」への大転換
池側:非常に興味深いのは、PBR向上に向けた「無形資産投資」の考え方です。公開資料では、2031年までに人的資本投資に700億円を投じるという、未来投資(600億円)を上回る計画を立てられています。
遠藤:投資家からは「人的資本投資がどう利益につながるのか」を厳しく問われます。私たちは、人的資本投資を「費用」ではなく、将来の期待値(PER)を高め、結果としてROEを押し上げる「資産」と定義しました。具体的には、人件費に占める人的資本投資の割合を27%から35%(135億円規模)へ引き上げる計画です。
池側:FP&Aが「目に見えない資産」の収益性を可視化しているのですね。
加藤:そのとおりです。キャピタルアロケーションにおいて、配当や自社株買いといった株主還元(2,000億円)と並び、人的資本への投資を戦略の核に据えています。これをFP&Aがモニタリングし、進捗を投資家へ開示することで、市場からの信頼を獲得しています。
情報の断絶を回避する「スリーラインモデル」
池側:2期連続の計画未達という危機感から生まれたFP&A組織ですが、立ち上げ当初の組織体制とその変遷について詳しくお聞かせください。日本企業でFP&Aを導入する際、既存の経理や経営企画との役割分担に苦戦するケースが多いですが、貴社はどう乗り越えたのでしょうか。
加藤:当初、私たちが直面したのは「情報の断絶」でした。そこで導入したのが、内部監査などにおける「スリーラインモデル」を応用した独自の体制です。第1ラインを各事業部、第2ラインを事業会社内の「FP&A部」、そして第3ラインを遠藤が率いる「グループFP&A部」と定義しました。
