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“ドリル”に注目しても「顧客のジョブ」は掴めない-「顧客ジョブマップ」の理解と活用

第3回:顧客の真のニーズを知り、自社だけの市場を創る

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 新規事業が失敗する最も大きな原因は、ターゲットとする顧客が欲しくないモノを作ってしまうことにある、と言われています。ピーター・ドラッカーは、「事業の目的とは顧客の創造である」と言及しています。さて、今回は、顧客の真のニーズを知るための手掛かりとなるツール「顧客ジョブマップ」をご紹介しましょう。顧客ジョブマップは、先日来日したクリステンセン教授が推奨するジョブ理論をベースにした「成果指向型イノベーション(Outcome-Driven Innovation)」※1)という方法論で紹介されているツールです。

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「家族と映画に行く」のはジョブではなく、「家族サービスする」のがジョブ

 ジョブとは、プライベートであれビジネスであれ、私たち人間が生きていくためにしたいことやしなければならないこと全てを指します。それは、人間の基本的な欲求(例.食事をする)、実現したい目標(例.エベレストに登る)、解決すべき問題(例.病気を治す)、片づけるべき用事(例.掃除をする)を含みます。身体的な活動(例.運動をする)だけではなく、精神的な活動(例.リラックスする)もジョブに含まれます。

 ジョブ理論をベースとする「成果指向型イノベーション」は、(1)顧客は何らかのジョブを成し遂げるためにプロダクトやサービスを雇う、(2)顧客はジョブを上手く成し遂げる上での評価基準(望ましい成果)をもっている、(3)より上位のジョブは複数のステップから構成されるプロセスをもっている、(4)顧客はジョブを成し遂げる上で妨げとなる制約や障壁をもっている、というマーケティング上の前提から成り立っています。

 よくあるミスの1つに、プロダクトやサービスを雇っている状態としてジョブを定義してしまうことがあります。例えば、「電話をかけること」はジョブではなく、「誰かと連絡をとること」が正しいジョブです。真のジョブを発見するには「なぜ?」と問うことが役に立ちます。

 同様に、休日に家族を映画館へ連れていくマイホームパパは、「家族サービスをすること」がジョブかもしれません。マーケティングまたはプロダクト/サービス開発担当者として、個人的ジョブ(例.良い父親でありたい)や社会的ジョブ(例.家族や近所から良い父親と認めてもらいたい)といった見逃しがちな感情的ジョブを発見することも非常に重要です。
 さて、より上位のジョブは8つのステップをもつ普遍的なジョブプロセスをもちます(図1)。

顧客ジョブマップ図1. 顧客ジョブマップ

 抽象的な表現なのでピンとこないかもしれませんが、「海外旅行をする」、「彼女(彼氏)とデートをする」、「夕食の支度をする」、「納税申告をする」といったジョブを考えてみればお分かりになるでしょう。私たちは、このようなジョブを成し遂げるために複数のプロダクトやサービスを雇っていることがお分かりになるでしょう。このジョブプロセスは基本形ですので、カスタマイズしても構いません。重要なことは、皆さんの価値提案とそれを実現するためのプロダクトやサービスが、どの顧客ジョブに対応しているものなのかを検証すると同時に、他のジョブにも手を差しのべる機会があるか考えてみることです。

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

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