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AI時代の両利きの経営

ワイガヤをAIエージェントで再現──Hondaが挑む設計開発のAI変革、創造性を拡張するもの作りとは

ゲスト:株式会社本田技術研究所 伊藤修氏

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自然言語による3Dモデル生成とサロゲートモデルの役割

小宮:デザイナーやエンジニアの「言葉(感性)」を3Dモデルへ落とし込む技術についてもお伺いしたいです。一からテキストのみで3D形状を生成するのは技術的にまだ難易度が高いと聞きますが、意図の解釈のズレをどのように解消しているのでしょうか。

画像を説明するテキストなくても可
法政大学 デザイン工学部 システムデザイン学科 准教授 小宮昌人氏
野村総合研究所、産業革新投資機構(JIC-VGI)などを経て現職。産業価値デザイン研究室にて生成AI・AIエージェント、フィジカルAI、データスペースなどをビジネスや社会価値へ転換する手法の研究に従事。著書に『生成DX〜生成AIが生んだ新たなビジネスモデル〜』(SBクリエイティブ)など多数。

伊藤:まさにその通りで、完全に無から3Dモデルを言語生成するのは現代の技術では限界があります。そこで私たちが構築したのが、サロゲートモデル(物理シミュレーションを高速近似するAIモデル)とLLM(大規模言語モデル)を組み合わせたアーキテクチャです。

 過去のデータを基に構築したサロゲートモデルをバックグラウンドに配置し、要求性能を満たす形状かどうかをAIが瞬時に判定します。その上で、ベースとなる形状を粘土のように変形(モーフィング)させる制御機構をLLMに担わせることで、デザイナーが提示するイメージと物理的な実現性を両立させています。これにより、従来はデザイナーと設計者の間で発生していたやりとりが大幅に短縮されました。

LPL(開発責任者)の意思決定と「人の役割」の変容

小宮:Hondaの車作りといえば、LPL(Large Project Leader:開発責任者)の強いこだわりやコンセプトが強みです。こうした職人技とも言える暗黙知をAI化・構造化することは可能なのでしょうか。また、それによってエンジニアやLPLの役割はどう変わりますか。

伊藤:示唆に富んだエキスパートの暗黙知を100%AIで代替することは、技術的にも容易ではありません。しかし、LPLの配下にいる多数の調整担当者の役割をAIエージェントが補助・代替することは可能です。

 調整業務や資料作成などの作業から人間が解放されると、エンジニアやLPLの役割は「作業」や「調整」から、「何を造るか」「どういう新しい体験を提供したいか」という純粋な意思決定(思考駆動型)へとシフトします。AIエージェントは人間の創造性を奪うものではなく、発想を具現化するスピードを爆発的に高め、クリエイティビティを拡張するためのパートナーなのです。

コミュニティ発の組織変革と独自のインセンティブ

小宮:先進的なAI技術を現場に浸透させようとすると、しばしば現場から「自分の仕事が奪われるのではないか」という抵抗が起きがちです。Hondaではどのようにして全社的な仲間作りを進めたのでしょうか。

伊藤:実は、この取り組みは草の根のコミュニティから始まりました。 社内のTeamsチャネルで「生成AIを勉強したい」という志を持った社員が自然発生的に集まり、その熱量が拡大した段階で経営層へスケールアップの提案を行いました。

 さらにユニークな仕組みとして、全社制度化した「GenAIエキスパート制度」における独自のインセンティブ設計があります。現場の社員が「生成AIで業務をこう改革できる」というプロジェクトを立ち上げ、認定されたエキスパートがアサインされると、通常の給与とは別に毎月インセンティブが支給される仕組みを構築しました。

 これにより、「仕事が奪われる」という懸念は「AIを使って自らの業務を先進的にシフトすれば評価・還元される」というポジティブな動機付けへと転換されました。現在では200名以上のエキスパートが誕生し、全社的なムーブメントとなっています。

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求めるのは単なる「ITスキル」ではなく「ビジネスアウトプット」

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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