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ディープテック「事業化」への道筋

ディープテック・エコシステムの設計図。大学発スタートアップを育む大企業の役割と「3つの壁」

第3回

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世界の投資動向と、日本に求められる「協調投資モデル」

 ディープテック分野は高リスク・長期回収ゆえ、投資家にとっても特別な目利き力と忍耐が求められます。しかしその成長可能性から、世界的に見て着実に投資額は拡大してきました。BCGのレポートによれば、2010年代初めにはVC投資全体の1割程度だったディープテック関連投資が、直近では全体の20%前後を占めるまでになっています[2]

 特に2021年には世界で約1,600億ドルもの資金がディープテックに投じられましたが、その後の金利上昇局面で2022年は約1,050億ドル、2023年上期には一時2020年並みの水準まで落ち込みました。もっとも、VC投資全体に占める割合は2019年以降おおむね20%前後で安定しており、1件あたりの投資額はむしろ大型化しています。さらに2024から2025年にかけては、生成AIの台頭やエネルギー転換投資の拡大を追い風に、ディープテック投資は再び回復局面に入りつつあると指摘されています。これはAIブームなど特定分野の牽引もありますが、宇宙開発、クリーンテック、核融合、次世代医療など幅広い領域でディープテックへの資金流入が一般化してきた結果と言えるでしょう。

 地理的に見ると、米国と中国がディープテック投資の両巨頭です。投資額ベースでは両国で世界全体の約7割を占めており、その内訳は米国が60%以上、中国が12%程度、欧州全体で14%程度となっています。米国は大学・政府・民間資本が一体となったエコシステムが古くから確立しており、シリコンバレーに代表されるようにディープテック系スタートアップにも豊富なリスクマネーが供給されています。一方、中国も国家主導の大型投資ファンドや国策プロジェクトを背景に、AI・量子技術・新素材といった分野で巨額の投資を行ってきました。

 欧州は米中に比べると投資規模で劣るものの、政府助成やEUレベルの資金プログラムが下支えしています。また、イスラエルやシンガポール、北欧諸国などGDPあたりのディープテック投資比率が高い国もあり、小国でも政策と産業の集中投資で独自のポジションを築こうとする動きが見られます。たとえばイスラエルはサイバーセキュリティや農業テックで世界的スタートアップを輩出していますし、フィンランドは量子技術の分野で存在感を示しています。これらは政府の研究開発投資と民間ベンチャーの連携によりエコシステムを形成した成功例です。

 では、日本のディープテック投資環境はどうでしょうか。前述のとおり、大学発スタートアップ数は増加していますが、彼らを支えるリスクマネーの総量はまだ十分とは言えません。国内には近年「リアルテックファンド」のようにディープテック特化を掲げるVCも登場し、大企業や政府系金融機関がLP出資者として参加する形で資金供給が始まっています。ただ、そのファンド規模や案件あたりの投資額は米中と比べれば見劣りするのが実情です。経済産業省などもディープテック分野への民間投資拡大を政策課題に掲げており、制度的なインセンティブ(たとえば税制優遇や政府保証付きのファンド造成)を検討しています。

 また、大学発スタートアップへの直接投資としては、各国立大学が設立したベンチャーファンド(東大IPCや京大VCなど)が頭角を現し始めました。これら大学系ファンドは、自大学の研究成果を事業化するスタートアップに出資すると同時に、外部の民間資金も呼び込んで共同投資するハイブリッドなモデルです。事業会社から見れば、自組織が狙う技術領域に関連した大学ファンドや専門VCと戦略的パートナーシップを結ぶことも有効な一手となります。単に単独で投資するのではなく、知見を持つプレーヤーと協調することで、リスク分散と情報収集のメリットが得られるからです。

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[2] Boston Consulting Group (BCG) プレスリリース「Deep Tech Claims a 20% Share of Venture Capital, Surging Two-Fold in the Past Decade

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ディープテックを育む「新しいエコシステム」の設計図

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この記事の著者

金子 佳市(カネコ ケイイチ)

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