成長実感と心理的安全性を高める「フィードバック」の効果
組織の壁を打ち破り、従業員を成長させる具体的な仕組みとして効果を発揮するのが、日常的なフィードバックである。調査データによると、上司から日常的にフィードバックを受けている社員は、安心して意見を言える心理的安全性が高い割合が74.3%であったのに対し、フィードバックがない社員は32.6%にとどまり、41.7ポイントもの大きな差が開いた。
さらに、自身の成長を実感している割合についても、フィードバックがある社員は71.9%であったのに対し、ない社員は41.2%と明確な違いが表れている。この傾向は同僚間のフィードバックにおいても同様の相関関係が確認されている。
また、努力や成果を認めるポジティブな声かけと、耳の痛い改善点の指摘の両方が揃っている職場では、上司をプロフェッショナルとして尊敬している割合が82%に達した。相手の成長を願って正すべき点を明確に伝える上司ほど、現場からの尊敬を集めている実態が明らかとなった。
組織の「静かな崩壊」を食い止める3本柱の実装
従業員が声を上げなくなる背景には、「何を言えばいいかわからない」という迷い、「言っても何も変わらない」という諦め、「言ったら不利益を被るかも」という恐れという3つの心理的な壁が存在する。
これらが重なるほど自社の成長実感は大きく低下していくが、三村氏はこれらの壁は個人の感情の問題ではなく、組織成長に関わる構造的な問題であると指摘する。
だからこそ、経営理念の浸透、従業員の声が循環するVoEサイクル、そして互いに高め合うフィードバック文化という3つの柱を同時に整備することが不可欠となる。調査結果では、これら3つの柱がすべて整備されている組織は、1つも整備されていない組織と比較して、心理的安全性が高い割合が3.1倍、自社の成長実感が高い割合が3.5倍になるという劇的な改善効果が示された。
企業が「沈黙の組織」から脱却し、従業員一人ひとりが働きがいを感じる「高め合う組織」へと転換するためには、単なる制度の導入にとどまらない、声と行動の循環を生み出す仕組みづくりが求められている。
三村氏は、現場の違和感や知恵を経営に伝え、経営の思いを現場に下ろしていく循環こそが重要だと語った。
単に声を聴くだけではなく、経営トップ自らが耳の痛い声であっても真摯に受け止め、行動と説明を尽くすことで信頼が積み重なっていく。フィードバック経営の実現には、仕組み以上に経営者の強い覚悟と継続的な実践が不可欠であると言えるだろう。
