オリックス宮内氏が斬る。大企業の「官僚化」が成長を阻む壁
米倉:さて、そうした大企業のあり方についてですが、オリックスのシニア・チェアマンである宮内さんは非常に懐疑的な立場を取られていますよね。「大企業はダメだ」と。現在の日本の経済社会が抱える構造的な課題について、ご意見をお聞かせください。
宮内義彦氏(以下、宮内):オリックスも初めは一か八かのベンチャービジネスからスタートしました。そうした中で私自身、早い時期からサンフランシスコの助けも借りてベンチャーキャピタルを作り、数多くの起業家を見てきました。昔は志があってもバックグラウンドがない若者が多かったのですが、最近は極めてバックグラウンドのしっかりした優秀な若者がベンチャーを志すようになり、数も圧倒的に増えました。これは全体として見れば素晴らしい傾向です。しかし一方で、彼らが経済の40%を担うまでに育つかというと、果たしてどうでしょうか。私としては、現在の日本の経済社会には成長を阻む大きな壁が潜んでいると思っています。
米倉:優秀な人材は増えているのに、何がその壁になっているのでしょうか。
宮内:大きく言って、2つの問題があります。1つは、リスクを極端に恐れるベンチャーキャピタルの資金が小さすぎること。数はたくさん生まれているものの、資金自体がリスクを避ける傾向にあるため、アメリカの市場のように十分なリスクマネーがダイナミックに回っていかない現状があります。そしてもう1つが、ベンチャーを受け入れるはずの「大企業の組織構造」です。大企業と一緒にやろうとしても、実は日本の大企業は過去の成功体験に縛られ、行政組織のような「官僚組織」になってしまっています。つまり、終身雇用や定年制度、年功序列といった官僚的システムを残したままでは、ベンチャーのスピード感とは絶対に溶け合いません。素晴らしいベンチャーがぐっと入り込んで、何が何でも大企業を変えていくような力を持たない限り、共創は極めて難しいでしょう。
減点主義がイノベーションを殺す。デジタル庁が直面した前例の壁
米倉:今、宮内さんから大企業の官僚化について厳しい指摘がありました。それに関連して、髙橋さんは先ほど「スピンアウトして別組織にするのが現実的だ」とおっしゃいましたね。やはり、古い組織を残したままでは無理だとお二人とも感じていらっしゃる。
髙橋:ええ、やはり大企業本体をそう簡単には変えられないのが現実です。だからこそ、新規事業をスピンアウトさせるべきなのです。そうして新しく作った会社なら、人事制度も大胆に変えられますし、「Claude Code」のような最新ツールを使って仕事ができ、実装スピードも速い。したがって、ないものねだりをして古い組織を変えようと疲弊するより、違う文化を持つ組織を外に作り、そこを中心に成長していくのが良いと確信しています。
米倉:なるほど。では平井さん、政府の側から見てこの「官僚組織の壁」というのはどう映りますか。
平井:まさにその通りで、私自身も痛感しています。というのも、5年前にデジタル庁を作った時、「ガバメント・アズ・ア・スタートアップ(Government as a Startup)」を掲げました。官民半々でスタートし、今は1,500人体制ですが、今までの行政組織ではない新しいものを作ろうとしたのです。しかし5年経ってみてわかったのは、官僚組織の「間違ってはいけない・失敗してはいけない」という前例主義があまりにも強烈だということです。つまり、「リスクがあってもアジャイルにやってみよう」という民間人と一緒に仕事をするのは、想像以上の苦しみがありました。これって実は、大企業とスタートアップの共創の難しさと全く同じ構図なのです。さらに言えば、一度失敗すると“抹殺”しようとする日本の文化が、エコシステムの大きな足かせになっています。



