2026年8月、ダイキン工業は統合報告書「統合報告書 2026」および「サステナビリティレポート 2026」を自社ウェブサイトで同時公開した。前戦略経営計画「FUSION25」での成長基盤を振り返りつつ、2027年3月期を初年度とする新たな戦略経営計画「FUSION30」の始動を発表。収益性と資本効率の向上(「率の経営」)を軸に、持続的な企業価値向上と社会課題解決を両立させる価値創造ストーリーを示している。

「FUSION25」の5年間において、同社は売上高5兆円超(2026年3月期実績:5兆150億円)を達成し、過去最高業績を更新するなど事業規模を順調に拡大させた。一方で、欧州暖房市場の減速や中国市場の低迷、機器のコモディティ化や先行投資の回収遅れなどにより、営業利益率やROEは目標水準に届かない結果となった。これを受け、2026年度からスタートする「FUSION30」では「稼ぐ力の再強化」と「質の向上」を全社方針の中心に提示。2029年3月期に営業利益率10%・ROE12%、2031年3月期にはROE15%超の達成を目指す構えだ。
FUSION30における収益性向上の中核施策として、従来の機器販売中心モデルから、建物のライフサイクル全体で価値を提供する「ソリューションプロバイダへの変革」を加速させる。優先用途市場として「データセンター」「工場」「オフィス」「住宅」の4領域を設定。特に急速な需要拡大が続くデータセンター向けでは、米国での実績やグローバル供給網を強みにトータル冷却ソリューションを展開する。空調事業売上高に占めるソリューション事業比率を28%(2026年3月期)から40%(2031年3月期)へ引き上げ、粗利増益効果として4,200億円を目指す。また、事業部ごとに資本収益性を評価する管理指標「D-ROIC」を全面導入し、現場レベルでの資本効率意識の定着を図る。
経営基盤の高度化に向けては、AIおよびデジタル技術の徹底活用を掲げる。5年間で1,500億円を投じてデータ基盤やAIエージェントの活用環境を整備し、間接業務の集約・効率化などにより累計2,000億円の収益改善効果を見込む。同社の強みである「人を基軸におく経営(PCM)」のもと、行動指針「PCM Behaviors」の実践(目標75%)や、グローバル幹部・リーダー候補2,000人以上の育成、ソリューション人材・デジタル人材の計画的拡充を進めるほか、女性役員・管理職の登用推進などダイバーシティ経営も強化する。
「サステナビリティレポート 2026」では、財務と非財務を一体とした環境・社会課題解決の取り組みを網羅的に開示。「環境ビジョン2050」のもと、ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量を売上高あたり40%削減(2023年3月期比)、削減貢献量を6,000万t-CO2へ拡大する目標を設定した。省エネ性の高いインバータ機やヒートポンプ暖房・給湯の普及拡大に加え、フロンの回収・再生・破壊を一体で担う「冷媒エコサイクル」の構築、水資源保全や「“空気をはぐくむ森”プロジェクト」を通じた生物多様性保全など、サーキュラーエコノミーとネイチャーポジティブへの貢献策を明記している。
両レポートの主なコンテンツとして、代表取締役会長兼CEOの十河政則氏による「質の向上」への決意表明、代表取締役社長兼COOの竹中直文氏による現場起点の変革とソリューション収益化策、新たに設置されたCFOの高橋孝一氏による財務・資本戦略(3,500億円の自己株式取得や1.8兆円の成長投資計画)、人事担当役員の佐治正規氏による人的資本経営メッセージ、社外役員6名による座談会などが盛り込まれている。
ダイキンは本報告書を通じたステークホルダーとの建設的な対話をベースに、「環境と空気の新たな価値」を提供し、世界で選ばれ続ける高収益なサステナブル企業への進化を図るとしている。
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