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NECが実践する「AI自律型組織」との経営──「人的資本」と「AI資本」の最適化による競争優位とは

登壇者:日本電気株式会社 執行役 Corporate EVP 兼 CAXO 小玉浩氏

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5つの要素で構成される「AIキャピタル」と自社を実験場にする「クライアント・ゼロ」

 企業OSを再構築するうえで、NECが重要な経営資産として位置づけているのが「AIキャピタル(AI資本)」である。AIキャピタルとは、組織に深く組み込まれた経営資産そのものであり、あらゆる経営判断や実行、その結果生じたナレッジを吸い上げて自律的に進化し、複利的に価値を生み出す源泉となる。

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資料提供:日本電気株式会社/クリックすると拡大します

 一般的に語られるAIキャピタルの概念をNECのモデルに当てはめると、主に5つの構成要素に分解される。セキュリティやガバナンス、倫理観を担保する評価・監査・制度、自律的にタスクを分散処理するAIワークフロー・エージェント、全社データを一元化しNECのドメイン知識をAIが解釈可能な知識体系へと構造化したデータ・ナレッジ(One Data/IQ・オントロジー)、用途に応じて最適化されたモデル・アルゴリズム、そしてこれらを支えるGPU・推論・コンピュートプラットフォームである。

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資料提供:日本電気株式会社/クリックすると拡大します

 これらのAIキャピタルを活用する際、人間側の役割も大きくシフトする。人間は細かな実務作業から解放され、「方向性の提示」「最終承認」「責任」「統治(ガバナンス)」という、真に意志と決断を要する高度な機能に集中する。現実を動かし未来を創る主役はあくまで人間であり、その実行力とスピードをAIキャピタルが大幅に加速させる構造だ。

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  同社では、この大構想を絵描いただけで終わらせず、徹底的な実践によって証明してきた。社内生成AIサービスの利用者は2026年1月時点、グループ内で約9.5万人に達し、利用回数は46万回を突破している。全社で累計約50万時間の業務工数を削減し、管理会計分野においては業務工数の60%削減を見込んでいる。さらに、現場の課題を即座に解決するために社員自らが作成した「専門家AI」は3,500体以上も稼働している。

 この地道な積み重ねの延長線上にあるのが、自らを「0番目のクライアント」として実験場にする「クライアント・ゼロ」のコンセプトである。自社内で徹底的に実験し、泥臭い課題や苦労を含めた「生きたナレッジ」を蓄積したうえで顧客や社会に還元していく姿勢が、同社のDX・AX(AIトランスフォーメーション)推進の根幹を支えている。

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AIエージェントが「社員」として機能する──AI自律型組織の構造とガバナンス

 こうした歴史と実績の先に、NECが新たに立ち上げたのが「AI自律型組織」である。これは単にAIツールを部署内に配備したというレベルのものではなく、「AIを主語にした組織」として設計されている点に最大の特徴がある。

 「我々のAI組織のエージェントは、もう社員と同等です。前提として人もAIも、NECのパーパスや行動原理、プリンシプル、インテグリティといったものは共通であるという考え方に基づき、しっかりとオンボーディング(組織適応)を行っています」と小玉氏は語る。

 組織として機能させるためには、ガバナンスとコード(規範)が欠かせない。同社では、人間に対して適用してきた組織管理の仕組みをそのままAIエージェントにも当てはめている。具体的な組織構造として、AI自律型組織は「AI部門長」「AIボード」「AIマネージャー」「AI社員」の4つの階層で構成されている。

 最上階層のAI部門長「全体統(ゼンタイ オサム)」が組織全体を統括し、AIボードにはCAXO相当の「改革」、CFO相当の「財前」、CHRO相当の「人見」、CRCO相当の「守屋」、CSO相当の「戦略」といった役員級エージェントが名を連ねる。その下で役員会事務局の「議堂」、ナレッジ蓄積の「知泉」、品質・レビューの「研鑽」、決算・財務検証の「検算」、ヘルスケア・ストレス管理の「Health Vera」などのAIマネージャーが横断的な管理やチーム育成を行う。最前線で動くAI社員も発足当初の17名から36名へ拡大し、ニュース分析の「報道」、営業データ分析の「盤面」、AI化できる仕事発掘の「探査」、公共担当の「事業」、金融担当の「金結」、CFOレポート作成の「勘定」といったエージェントが専門業務を自律遂行している。

 注目すべきは、彼らすべてのAIエージェントに固有の名前と明確なミッションが与えられている点だ。たとえば、コスト管理を担当するエージェント「倹田」は、「スピードも大切だが、速さのためにコストを無視するのは違う。コストをしっかり管理する」という価値観を軸に動いている。レビューを担当する「研鑽」は、「インテグリティ(誠実さ)であり、確認手順は絶対に妥協しない」という強い行動指針を持っている。このように、個々の役割に応じたパーソナリティと行動規範が事前にインプットされているのである。

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役員会での激論から評価・ストレス管理まで──可視化されるAI組織の日常

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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