i.schoolを母体として誕生した「i.lab」──人間中心によるイノベーションメソッドを提供
——大手企業のイノベーションを担うコンサルファームとして注目を集める「i.lab」ですが、まずは代表の横田さんから、設立の目的やご経緯についてお話しいただけますか。
横田:
まずは「i.lab」の母体である「i.school」から簡単にご紹介したいと思います。「i.school」は、イノベーション人材の育成を目的に、東大の「知の構造化センター」が2009年に設立した教育プログラムです。従来の技術起点型ではなく、人の知覚や行動、価値観などに基づく「人間中心」をイノベーションのベースと考え、思考法や方法論に至るまで幅広い研究・教育を行っています。
実践的な教育が行われているとはいえ、東大が提供するプログラムなので、受講者は東大の学生とスポンサー企業からの派遣者で構成され、扱う課題も必ずしも一部の企業に寄与するものではありません。そのため、スポンサー企業からはもっとi.schoolでの知見を活かして自社の案件に本気で取り組んでもらえないかとリクエストがあがっていました。
そこでi.schoolの創設者の一人でエグゼクティブ・ディレクターを務める東大の堀井秀之教授をアドバイザーとして迎え、同じくディレクターである私が代表となって、2011年12月にイノベーション・ラボラトリー株式会社(通称i.lab)の設立に至ったわけです。
——i.schoolで研究・開発されたイノベーションを起こすための手法とは、具体的にはどのようものになるのですか。また、顧客となる大手企業はどこに期待を寄せているのでしょうか。
横田:
「イノベーションを起こす」というと、カリスマ性のある一人の天才がアイディアを思いつき、事業として開発し急成長させ、世の中を大きく変えるというイメージがあるかもしれません。しかし、大企業の場合は、様々な部署に様々な新しい技術や気づきといった“イノベーションの種”があり、それらの価値を共有して、多くの人と合意形成しながら事業として育てていくことが求められます。そのためには一人ひとりにオーナーシップを持ってもらい、推進力を持たせることが有効です。「i.school」のプログラムも同様に、グループでアイディアを出して、みんながそのアイディアに愛着を持つことを大切にしています。そうした手法に共感いただき、かつ課題意識と合致したことから、大手企業の方々にお声がけいただいているのだと思います。
実はi.lab設立の直接的なきっかけとなったのは、とある大手製造企業のプロジェクトでした。組織の大きな方向性を決定する総合企画部で既にテーマが決まっている中でi.schoolのプログラム提供について要請をいただき、大急ぎで株式会社を立ち上げました。それだけi.schoolのイノベーションプログラムに実効性を感じていただけたのだと理解しています。