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テクノロジーの経済学

限界費用ゼロ社会で起こる、「経済主体の分散」と「富の集中」とは?

テクノロジーの経済学:第1回

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「組織内に抱えるか、市場から調達するか」という取引コストの問題

 第二のレベルの取引コストは、第一のレベルの取引コストにおいても特殊なものを抜き出したもので、「組織か市場か」を判断する際に使うものである*1。すなわち、自らの指揮命令系統の中で生産したほうが良いか、市場から調達したほうが良いか、という判断につながるようなものだ。例えば、企業が社内で使用するコンピュータ・システムを開発する際に、企業内部に人を雇って開発すべきか、外部の専門事業者に開発を委託すべきか、という問題がある。ここでは、企業内部に人を抱えることを「組織」と呼び、外部から必要なサービスを調達することを「市場」と呼ぶ。

 この「組織内に抱えるか、市場から調達するか」という判断にも、取引コストが大いに関係している。ここでは先に述べた直接的なコストに加え、さらに意外な取引コストが発生し、その一つが「不確実性」である。ソフトウェア開発の場合は、最初から明確に仕様を確定できない場合や、ユーザーの要望に応じて柔軟に変更すべき場合などは、不確実性が高いと言える。外部業者から見ると、こうした不確実性はリスクとなり、その分のリスク・ヘッジ分が費用に上乗せされる。これが不確実性に起因する取引コストである。このコストがあまりにも高くつく場合には、外部から調達するよりも、組織内に人を抱えて開発する方が有利になる。

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高木 聡一郎(タカギ ソウイチロウ)

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