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ネットワーク科学研究者・佐山氏が語る、幼少期の「複雑なまま全体を捉える能力」が未来を創る理由

特別鼎談:佐山弘樹氏×入山章栄氏×佐宗邦威氏 前編

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多くの識者との対話の根底に流れていた「ネットワーク」という共通項

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 佐山さんには、私が米国にいる頃にTwitterでかなり頻繁にやりとりさせていただいていましたが、実際にお目にかかるのは今回が初めてなんですよね(笑)。ボストン近郊にいい納豆を作る人がいるという情報まで教えていただいて(笑)。あれは、本当においしかったです。

佐山(ニューヨーク州立大学ビンガムトン校 教授):
 そうですね。だから、まったく初めてという気がしませんけど(笑)。

佐宗(biotope 代表取締役社長):
 私も、お会いできるのを楽しみにしていました。ここ数年思うのは、局所的に始まったことが一気に伝播するスピードが上がっていたり、一方で突然ブラックスワン的な大きな変化が起こったりと、変化が激しく先を見通すのが難しくなっていることです。その中で未来をデザインしようとすると、全体の構想を描いてプロセスを完成させていく型から、ネットワークの中で共創しながら全体の絵を描きかえていくアジャイル型へと変わらざるを得ないと感じています。その変化は、まさに「複雑系」そのもの。ですから、その法則を知ることで、個別の事象も解き明かせるのではないかと期待しているんです。

入山:
 本連載ではイノベーション・クリエイティブを軸に、第一線で活躍される様々な方をお招きして鼎談を行ってきたのですが、共通項として見えてきたのが「ネットワーク」なんです。「つながる大切さ」を脳科学でも、ビッグデータでも、マインドフルネスでも、仏教でも言っている実感があります。そこで、私たち2人の専門範囲である社会学系ではなく、物理学的な現象や構造としてネットワークについて研究している佐山さんにお会いしたいと考えるようになったんです。

佐山:
 それは光栄ですね。私の場合、物理というより、コンピュータサイエンスがバックグラウンドです。野心的な研究者は、自分で研究ストーリーやキャリアプランを建てて、それに沿って研究を進めていくことが多いんですが、私は興味の赴くまま手をつけているうちに、いつのまにか研究の範囲が説明しにくいほど広がってしまいました。そこで十把一絡げにして「複雑系をやっています」と説明しています(笑)。ビジネス系の分野でも、意思決定やチームダイナミクス、組織行動論などいろいろやっていますよ。

入山:
 佐山先生の業績は、各方面で高く評価されていますよね。でも、もともとはコンピュータサイエンスが起点なんですね。

佐山:
 ええ、2005年までは日本にいて、電気通信大学で情報系の講義を受け持っていました。ご存知のように、脳や神経も、生態系のなかでの雨水や炭素などの動きも、あらゆるものが循環したネットワークとして捉えることができるわけです。電通大では文理越境を目的とした「人間コミュニケーション学科」にいたために、人材やお金、労働などいろんなモノをネットワークとして捉え、分析することが身近でした。

佐山 弘樹佐山 弘樹 氏 / ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(ビンガムトン大学)システム科学・産業工学科教授、複雑系集団動態学研究センター長)
1999年東京大学情報科学専攻にて博士(理学)取得後、ニューイングランド複雑系研究所にて3年間学際的研究に従事。2002年から2005年まで電気通信大学人間コミュニケーション学科に在籍。2006年にビンガムトン大学に移籍。研究分野は動的ネットワーク理論、集団行動学、計算社会科学、人工生命・人工化学、進化計算、ほか複雑系科学全般。国際複雑系学会 (Complex Systems Society) 理事・運営委員。Complexity (Wiley/Hindawi) ほか各種複雑系関連学会誌編集委員。2014年よりノースイースタン大学複雑ネットワーク研究センター客員教授、2017年より早稲田大学商学学術院客員教授を兼任。

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