IoTの進化の初期段階「カスタム期」におけるマネタイズを実現するサービスデザインとは

第2回

 前回は、プロダクトの販売から成果の共有、IT(情報技術)とOT(運用技術)の統合、バリューチェーンからバリューネットワークという産業と経済に影響を与える3つの大きなシフトを取り上げました。
 Biz/Zine Dayにおける日本マイクロソフト菖蒲谷氏の講演では、IoTの進化の4段階が、「1:カスタム」「2:リピータブル」「3:統合」「4:ユビキタスIoT」として紹介され、現在のIoTは概ね、「1:カスタム」の段階にあると指摘されました。
 今回の記事では、進化の段階が「1:カスタム」期における、IoT活用での測定可能な成果を実現するためのアプローチ「成果指向のIoTサービスデザイン」について簡潔に整理していくことにしましょう。このアプローチは、IoT技術のマネタイズ化に悩んでいるプロバイダー、投資対効果(ROI)が不明瞭なためにIoT技術の導入に慎重になっている企業の双方にとってのガイドラインとして役立てば幸いです。

[公開日]

[著] 白井 和康

[タグ] ビジネスモデル IoT サービスデザイン ビジネスモデルデザイン CIO COO IT OT バリューネットワーク ダボス会議

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「IoE」の4つの柱と8つの普遍的なジョブステップ

 成果指向のIoTサービスデザインの最終的なゴールは、関連するヒト、モノ、データを結び付けることによって、将来の望ましい成果の実現に対する能動的なアクションを起こすために、対象とするオペレーション領域内に自己検知、自己診断、自己学習、自己修正、自己制御の仕組みを構築することです。

 最初にご紹介する成果指向のIoTサービスデザインのベースとなる中核的なコンセプトは、大手テクノロジー企業であるシスコシステムズ社が提唱する「IoE(インターネットで全てをつなぐ)」です(図1)。このコンセプトを活用することによる、成果指向のIoTサービスデザインは、大きく以下の3つのステージに分けることができます。

  • 対象とするオペレーション領域における望ましい成果、その成果の実現を阻む障害や制約を明らかにする(ステージ1)
  • その成果を実現し、障害や制約を克服するために、ヒト、モノ、データを適切に結び付ける(ステージ2)
  • フィードバック/フィードフォワードを組み合わせることによって、そのオペレーション領域における制御と学習のメカニズムをデザインする(ステージ3)

 以下、順を追ってご説明していきましょう。

IoEの4つの柱(図1)IoEの4つの柱

 「ステージ1」では、対象とするオペレーション領域をステップバイステップのプロセスに分解し、その最終的な目標を明らかにしていきます。ここでは、成果指向のイノベーションというフレームワーク(Biz/Zineでも紹介されているクリステンセン教授とともにジョブ理論を展開しているアンソニー・アルウィック氏による)に沿って、8つの普遍的なジョブステップに分解していきます(図2)。

普遍的なジョブステップ(図2)普遍的なジョブステップ

 IoEを構成する4つの柱と8つのジョブステップを組み合わせることによって、対象とするオペレーション領域における成果の実現を最大化するための初期テーマを設定することができます。それは、(1)ヒトとヒトをより適切かつ価値ある方法で結び付けてあげる、(2)物理的なモノをインターネットにより結び付け、知的な意思決定ができるようにしてあげる、(3)データをより良い意思決定に役立つような知性に変換してあげる、(4)適切な情報を、適切なヒトやモノに、適切な時間に提供してあげることによって、以下の「問い」を導き出すことを可能とします。

  • ジョブの履行に関する計画をシンプルにし、目標値の設定をガイドしてあげることはできないだろうか?
  • ジョブの履行に必要とされる情報やアイテムの収集を容易にし、いつでもどこでも入手できるようにしてあげることはできないだろうか?   
  • ジョブの履行に関する準備を容易にし、適切なセットアップができるようにガイドしてあげることはできないだろうか?
  • ジョブを履行する前に、最終的に必要な情報を提供してあげることはできないだろうか?
  • ジョブ履行時おける何らかの問題や遅延を防いであげることはできないだろうか?
  • ジョブ履行状況の監視を、何らかの改善につなげてあげることはできないだろうか?
  • ジョブの履行に関する変更の必要性や変更の数を減らしてあげることはできないだろうか?
  • ジョブ全体を完了するための労力を減らしてあげることはできないだろうか?

 従来のプロセスマッピングとの大きな違いは、実際にしていること(例.レントゲン写真を見る)というよりも、本当の目的(例.患者の体内の状況を調べる)を記述することです。こうすることによって、課題の本質と現在雇っているプロダクトの欠点を明らかにし、将来にわたるソリューションに対するスペースを広く取っておくことが可能となります。

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