公的資金注入によって銀行は良くなったのか
宇田川 元一 准教授(以下、敬称略):長田先生は、先日エコノミストにも「金融危機と再編 『銀行は破綻しない』時代の終焉 変わらぬ『質より量』の旧来体質」というタイトルで寄稿なさっていましたが、銀行についての研究をずっとなさっているのですよね。
長田 健 准教授(以下、敬称略):銀行に関わることであれば基本的になんでも研究対象にしていくのが僕のスタンスです。博士論文では、90年代に日本のみならず世界中が自己資本比率(BIS)規制、いわゆるバーゼル規制を導入したので、バーゼル規制の影響を軸に、「自己資本比率規制と銀行行動」というタイトルの論文を書きました。
今、興味を持っているのは、「銀行内の個人的なつながり」です。最近、個人的なつながりが企業行動に影響を与えるといった研究が、金融経済学で盛んに行われているのですが、学閥などの人間関係が銀行行動に与える影響を共同で研究しています。90年代末から2000年代初頭に、銀行が倒産しないようにと多数の公的資金注入が行われましたが、その結果がどう銀行内の学閥などの個人的なつながり(パーソナル・ネットワーク)に影響を与えたのかを、まずは調査しています。
「護送船団方式」などと言われますが、銀行への公的資金注入は、時代に合わなくなった古い体質から効率化をするために行われるものです。しかし、その公的資金注入が実際に効率化につながったのかは、なかなか測定が難しいのです。そこで、学閥を利用してそれが行われたかを測定しました。*1
*1:https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2634850