役員のお墨付きでアジャイル開発が公認に。技術系の新部署立ち上げに携わる
仲山進也さん(以下、敬称略):プレゼンをやってみて、役員の皆さんの反応は?
倉貫義人さん(以下、敬称略):ウケました。意外だったのは、「俺たちの若い頃の仕事の仕方はそうだったよ」とすぐ共感してもらえたこと。30年くらい前に会社を創業した頃のワチャワチャした感じを経験していた人たちは、システム開発にアジャイルが向くことは感覚的に理解できたみたいで。年配ウケするんだなというのが発見でした。一方で、会社が上場した後に入ってきたマネジャー層は、「いやいや、きちんとプロジェクトマネジメントしないとダメでしょう」と考える人が多くて、なかなか理解してもらえない。そういう構造が見えてきました。
仲山:役員の理解を得られたことで、変化はありました?
倉貫:風向きは変わりましたね。その直後に、基盤技術センターという研究開発系の部署を立ち上げることになって、その立ち上げメンバーに僕も呼んでもらえたんですよ。周りはすごい年上のエキスパートばかりでしたけれど混ぜてもらえて。そこでアジャイル開発もやっていいという“公認”をもらえて、草の根運動がついにオフィシャルに。社外の勉強会で「TISの倉貫です」と堂々と言える立場になりました(笑)。
仲山:アジャイル開発の社内展開もうまくいったんですか?
倉貫:それが大きな壁に当たったんですよね。お客さんから受注したプロジェクトをアジャイルで開発していくとき、普通は優先順位が高い機能から作っていくので、50%くらいできあがった段階でかなり満足度の高いものになっているんですね。すると、「残りの50%の機能A、要る? それより、別の新しい機能Bを作った方がいいよね」と話が進むんです。ところが、受注の内容はそうなっていないから、「機能Bも欲しいけれど、機能Aも作って」となっちゃう。いやいや、やること増えてるでしょ?って(笑)。
仲山:結局、契約自体が、やることを全部先に決めるウォーターフォール型だから、その影響を受けちゃったと。
倉貫:そうなんです。結局、お客さんのリスクを最大に見積もって受注して、はじめの約束通りに納品することで利益が成り立つビジネスモデルなのだとあらためて気づいて愕然としました。
仲山:サッカーやっているつもりの場所が、野球場だったような感じですね。「あれ、ゴールがない」的な。