人事は人の一生に責任を持つ仕事。その覚悟はあるのか?
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):まず、有沢さんの現在に至るまでのご経歴について、お伺いさせてください。
カゴメ株式会社 有沢正人氏(以下、敬称略):私が初めて人事の仕事を経験したのは、新卒で入った銀行ですね。そこで人事として目覚める、決定的な出来事がありました。
荒金:それは、どのような?
有沢:人事異動や昇進・昇格の担当をしていた頃に、初めて異動を考えるチーフを任された時のことです。大きなホワイトボードに、自分が担当する300人ほどの社員の名前を張り出して、全員の異動を決めていくのですが、先輩に「この人がここに行くのはどういう意味?」「この人を動かさないのはなんで?」「この人はここに異動させて、その次にどこに行くの?」と、一人ひとりについて事細かに聞かれました。
僕も自分なりに意図はあったものの、途中でその質問に答えられなくなってしまって。そしたら先輩から「お前は人事を辞めろ」と言われたんです。「わかってるか? 人事異動はその人の一生だけじゃなくて、その人の家族や親族にまで影響を与えるんだぞ。その責任感がお前にはまったくない」と指摘されて、ハッとしましたね。あそこが僕の、人事人生のスタートです。
「人事は人の一生に責任を持つ仕事。その責任感がない人は今すぐ辞めてくれ」――この言葉は、転職するたびに人事部の皆さんに必ず伝えています。逆に、その責任感があるなら、人事の経験がなくても来てもらいたい。
銀行の時も今もそうなんですが、僕の部下はもともと人事畑にいなかった人間ばかりなんですよ。人事の知識はなくても、彼らは現場を知っている。僕は、現場の苦労を知らない人間は、人事をやってはいけないと考えています。人事のスペシャリストをつくるのではなく、人事のマインドを持った人たちを社内に増やしていくのが、僕の役割だと思っているんです。