UXグロースの定義
——UXグロースとはどういったものか教えてください。
進藤利矢子氏(以下、敬称略):UXグロースの目的は、多くの人にサービスや製品を利用し続けてもらい、ファンになってもらうことです。サービスや製品を単に購入・契約してもらうことではなく、UXを改善することで継続的にビジネス成果を向上させるための活動だと考えています。
大幸祐貴氏(以下、敬称略):電通デジタルでもほぼ同義です。昨今は企業にとって、一人ひとりのユーザーとのつながりをいかに継続させるかが重要なテーマとなっています。UXグロースにおいても、ユーザーとの1度きりのつながりではなく、長く継続した付き合いが必要であるといった考えがあります。
——“UX”と冠が付いていますが、“UX”が付かない単なる「グロース」「グロースハック」などの業務とは何が違いますか。
大幸:日本においては「グロース=グロースハック」と捉えられる傾向にありますが、「グロースハック」は、たとえば、特定のコンバージョン率を上げるための施策を、データによる裏付けを基に素早く実行し、改善することを示していると思います。
一方で「グロース」は、特定のコンバージョンの引き上げ等ではなく、ユーザーとの長期的な関係構築を行い、売上を最大化させる、という考えを持っています。そのため、売上を上げるメインのユーザーはどのような方々で、どのようにすれば継続的なつながりを構築できるかの主要素をきちんと要素分解しながら、事業全体を成長させるための施策を実行していきます。
その上で、「“UX”グロース」は先の「グロース」の考えに加え、「ユーザーをより理解することを重視する」という意味を含んでいると考えています。「“UX”グロース」と「グロース」に大きな差はなく、“UX”を冠に付けていることによって、より「解像度を上げてユーザーを理解していく取り組みである」ことの意思表明になっているといえるでしょう。
進藤:我々ビービットも、単なる「グロース」や「グロースハック」とは区別する意を込めて「UXグロース」と呼んでいます。そもそもUXグロースには、大まかに次のような特徴があると考えています。
- 「目的不明瞭な改善計画」ではなく、「ビジネス成果の数値目標を追う」
- 「思いつき・アイデア」ではなく、「事実(=行動データ)を基に企画を立てる」
- 「一発勝負で完成系を目指す」のではなく、「実験を繰り返し、成功を拡大していく」
特に2点目が「グロース」「グロースハック」との大きな違いです。UXグロースの特徴は、量的・質的データを用いてユーザーをきちんと理解する、ユーザー分析のステップを入れている点です。このステップで、なぜユーザーが離脱してしまったのかを深掘ります。ユーザーがどういう経緯でそのページに訪れたのか、どういう気持ちでそのページを見たか、そしてそのページを見たことによってどんな変化があり、その行動につながっていったのか。ユーザー一人ひとりの行動を見ながら想像し、問題の原因を可視化していきます。この「よりユーザー理解の解像度を上げて施策につなげる」という点が、「グロース」「グロースハック」との違いだと考えます。