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事業創造に挑む成熟企業の両利き実践論

「両利きの経営」の実現を阻む経営者の“葛藤”とは──自社の“らしさ”というゴーストを乗り越える

第1回

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成熟企業の経営者が抱える“葛藤”

事業創造における3人の“キーパーソン”

 社員主導・ボトムアップ型の事業創造を行う際にキーパーソンとなるのが、「実践者」「支援者」「経営者」です。「実践者」とは、新規事業の種となるアイデアを出し、そのアイデアを事業化に向けて推進する主体者です。次の「支援者」とは、実践者をサポートし、事業化に向けた支援を行う人物。新規事業推進室や上司、外部のアクセラレータを指します。最後の「経営者」とは、トップ1人ではなく、経営を担う経営チームを意味します。経営や事業の意思決定を担う人たちであり、その責任を背負う方々です。

事業創造のキーパーソン
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 皆さんの組織ではこれらのキーパーソンそれぞれが力を発揮し、事業創造の推進力となるシナジーを生み出せているでしょうか。3者のいずれかが欠けても事業創造は成し得ません。自組織の事業推進が上手く機能していないと感じる場合には、改めて各々の抱える葛藤を知り、それを乗り越えるステップを踏む必要があります。第1回では、キーパーソンの1人である「経営者」の葛藤と、その乗り越え方を紐解いていきます。

事業創造における一番の難敵「経営者」

 事業創造の現場で一番の“難敵”と社員から言われるのが、「経営者」です。社員主導の事業創造を支援していると、新たな事業アイデアに厳しいフィードバックをする経営者を指して「我が社の経営陣は本気で事業を生み出したいと思っていない」「経営チームの世代交代がないかぎり我が社の未来はない」といった辛辣な意見を耳にすることもあります。そんな話を聞くと、経営者は不確実な挑戦を恐れ、確実に成果が上がることに注力する現実主義者のように映ります。しかし本当にそうなのでしょうか。経営者が抱いている“葛藤”を理解することで、事業創造推進へのより有効な手立てを得られると私たちは考えています。

「ロマンと算盤」「確実性と不確実性」という二律背反の中で迫られる決断

 経営者が抱える“葛藤”とはどのようなものでしょうか。

 まず、想像に難くないのが「短期成果」と「長期成果」の葛藤でしょう。特に上場企業となると四半期ごとの評価にさらされ、株主に約束した業績目標を達成しなければならないというプレッシャーが強くのしかかります。「価値ある会社にしたい」という経営者の強い想いが、長期的に世の中になくてはならない会社を目指す“ロマン”と、短期的に成果を上げることでより大きな期待をしてもらわねばならない“算盤”の間に葛藤を生み出すのです。

 また、事業創造現場でよく見聞きする「総論OK・各論NG」という現象も、この葛藤の産物です。新規事業への挑戦や社員を巻き込んだ新たな事業アイデアの種の探索を奨励すること自体はOK。しかし、実際に事業案が並べられ、投資を迫られたり、組織構造の変更案への判断を仰がれたりするシーンでは、ことごとくNGになってしまう。この“あるある現象”には、経営者の焦りが見え隠れします。

 他にも、価値を磨き込み、市場でより強い影響力を発揮したいという生存欲求と、変化の激しい時代こそ不確実なものを恐れずにリスクテイクをせねばならないという経営者としての責任意識が生み出す「確実性と不確実性」という葛藤。成熟企業で経営者を務める方は、既存事業で類まれなる成果を上げ続けてきたハイパフォーマーであることが多いため、既存事業の磨き込みは得意な傾向にあります。しかし、不確実なことへの挑戦については手探りとなることが多いようです。

 新規事業創出の営みにおいて、経営者が難敵扱いされてしまうのにはこうした背景があります。

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この記事の著者

菊池 龍之(キクチ タツユキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

横山 佳菜⼦(ヨコヤマ カナコ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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