コロナ禍により加速・変容した、企業の地域への関心
──その間、地方移住、さらには企業と地域の関わりにどんな変化がありましたか。
働き方改革の流れで、企業はいい人材を獲得するためには社員のウェルビーイングを考えなければならなくなりました。その結果、「自然豊かな地域に住みたい」という社員の希望に応える企業も増えたと思います。それまでは移住のためには会社を辞めなければならないのが常識でしたが、副業・兼業の流れもあり「転職なき移住」が実現するようになりました。
この流れを一層加速させたのがコロナ禍です。「密を避ける」という文脈で都市への一極集中への疑問を持つ企業も現れ始めました。ここ数年で、企業の地域への関心は一層大きなものになっていると感じます。
自然に囲まれた気持ちのいい環境で働くほうが、コンクリートの中で働くよりも社員の生産性は高くなる。家賃の高い東京のオフィスを縮小できれば、地域からの交通費も含めても経費を大きく削減できる。エビデンスをもとに、企業としての利益を考えてこうした施策を積極的に進める会社も出てきています。
それに伴い、私たちにお声がけいただく件数も増えました。以前は新しい生き方をしたい「個人」に向けたメディアでしたが、最近は新しい生き方をしたい個人が在籍する「企業」の方々にも興味を持ってもらえている。こうした変化を受けて今回立ち上げたのが『TURNSプラットフォーム』ということになります。
──どんなサービスなのでしょうか。
課題解決のために外部の知見やスキルが欲しい自治体・地域と、知見やスキルを地域の課題解決に活かしてビジネスチャンスを掴みたい企業とをマッチングする、会員制のサービスです。
まず自治体・地域は、プラットフォーム上にまち・ひと・しごと創生や脱炭素、DX推進などに関する地域課題を登録。この課題は自治体名を匿名化した上で公開されます。一方、企業側は地域課題解決につながるサービスや人材を登録。これらの情報をもとに私たちがマッチングを行い、課題解決につなげてもらうというのが、サービス利用の大まかな流れです。
私たち自身が手がけたわけではないのですが、地域と企業両者のマッチングが課題解決につながった例はどんどん出てきています。長野県千曲市では、ワーケーションで訪れた「LINE株式会社」や「日本マイクロソフト株式会社」などのIT企業の社員が、地域企業である「株式会社ふろしきや」や地域の方々とのコミュニケーションの中で課題を見出し、それをもとに「温泉MaaS」というアプリを開発。ワーケーションの支援や地元事業者の仕事につながった例[1]があります。
また他の事例もあります。鳥取県は2022年度に、県内事業者において週末限定で副業・兼業を担っていただく方を、都市部の企業を対象に募集をかけました。すると年間3,000人超の応募があり、124社220人の方とのマッチングが成立したという実績[2]もあります。
こうした事例は今後も増えていくはずです。私たちとしてはそこに貢献したいと考えています。
[1]株式会社ふろしきや「事例紹介:温泉MaaSプロジェクト(2020年〜)」
[2]鳥取県「とっとり副業兼業サミット」