大成建設は、VRを活用して山岳トンネル工事における切羽(トンネル最先端の掘削面)の岩盤状況を安全な状態で把握できる切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を開発した。
同システムは、切羽から十分離れた位置より3Dレーザスキャナを用いて、切羽の露出した岩盤の形状や色などを計測したデータを基に、VRによって実際の切羽の様子を忠実に再現可能。これにより、従来は目視にて観察していたトンネル掘削中の岩盤状況を安全かつ高精度に把握でき、岩石が剥がれ落ちる「肌落ち」などによるトンネル災害リスクを低減できるという。
システムの特徴は以下のとおり。
- 切羽を短時間でVR空間に再現し作業の安全性を向上:3Dレーザスキャナによる計測に約10分、VR化に約5分と短時間でVR映像を作成。これにより、VR空間を用いて迅速かつ詳細に切羽の近接観察ができ、掘削直後から肌落ちなどが予測される場所の事前確認が可能
- 遠隔地でもVRを用いて切羽情報の共有・意思決定が可能:計測結果は「いつでも」「どこでも」「詳細に」VRを用いて観察できる。そのため、遠隔地でも発注者や専門家との切羽情報の共有、遠隔立ち合い、支保工変更などの対策技術の選定などに関する意思決定を速やかに行うことができ、施工工程の遅延防止と生産性向上を図ることが可能
同社は今後、破砕帯想定区間など特に地山の地質リスクが高い区間に対して同システムを適用し、事前観察により岩盤状況を把握するなど、災害リスクの低減に向け運用を進めていくとしている。