エフェクチュエーションとコーゼーションは“二者択一”ではない
──ここまでのお話を、吉田先生はどのように捉えていますか?
吉田:「10の観点」には意思決定やステージゲート的なプロセスが含まれていますよね。それとエフェクチュエーションは相容れないのではないかと最初は感じました。でも、コーゼーションの論理で動いている組織がエフェクチュエーション的なマインドを持てるように支援するためのフレームワークなんだと捉えると、矛盾はないと思えました。
組織としての撤退基準やステージゲートを決めるというのも、「収益性はあるのか」とか「ニーズはあるのか」といって創造の過程にあるものを潰していくためではなく、会社としてどこまでコミットメント可能で、どこからが無理なのか、あるいはどういう方向性だったら意味を見いだせるのか……そういったことを明確にするためなんだということが、よく理解できました。
大長:そうなんです。意思決定の基準やステージゲートをあらかじめ考えておかないと、一番はじめの段階から従来のコーゼーション理論で評価されてしまうんですよ。そうではなく、「儲かるかどうかは、もっと後で考えることですよ」と言えるように、評価基準や損失可能な範囲を段階的に設定する必要があるんです。
それから、ステージゲートがないまま放っておくと、1年後になって初めて「あまり筋が良くないアイデアだった」ということが分かったりするんです。それでは遅いので、「3ヶ月後に判断します」という期限を設定し、3ヶ月間の中でできることに集中してもらう。そうでないと、3ヶ月で分かることを1年でやることになってしまいます。
吉田:3か月先のゲートまでに、エフェクチュエーションのサイクルをめちゃくちゃ回すということですね。
大長:そうです。「飛行機のパイロット」の原則で、3ヶ月の中でできることはこの3つしかない。その中でも「クリティカルなこれに集中しよう」という思考になってもらうのが大事で、そうでないと全部調べようとしてしまうんです。
吉田:なるほど。エフェクチュエーションのサイクルはどのような制約条件の下でも回せるものなのですが、大長さんが取り組んでおられるのは、それを組織としてどう促進してあげられるのかということなんですね。
大長:そうですね。環境を整備するということに近いと思います。新規事業を成功させるのに必要なプロセスを完遂できる組織能力と、新規事業活動を会社全体に波及させる組織能力の2つを獲得できるよう支援をすることで、新規事業の自走化ができる組織を増やしていきたいと考えています。
──この取材をきっかけにお二人のコラボレーションが進めば幸いですし、ケーススタディは是非Biz/Zineで掲載させてください。本日はありがとうございました。
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