貿易DXに対する企業の意識の変化
真畑:今、ASEAN地域を中心に連携を進めているとのことですが、諸外国における貿易プラットフォームの普及状況はどのようになっているのでしょうか。
吉川:ASEAN各国と比べると、日本のほうが普及は進んでいると思います。しかし、世界全体で見ると、まだ発展途上と言えるでしょう。欧米などにも貿易プラットフォーム事業者は存在し、日本企業も利用していますが、競争が激しい状況です。
真畑:貿易プラットフォームは、扱う商材や業界、輸出と輸入、メーカー、商社、物流会社などによって、求められる機能が大きく異なります。すべてのニーズを満たすプラットフォームを作るのは難しいと思いますが、ガイドラインの策定なども行いながら、個別の最適化に留まらず、全体として効率的な貿易エコシステムが構築されることが大切だと感じています。
吉川:おっしゃる通りです。
真畑: 検討会は1年半前に立ち上がったとのことですが、これまでの進捗状況はいかがでしょうか。
吉川:2023年に検討会を立ち上げ、2024年3月に中間取りまとめを行いました。中間取りまとめでは、荷主企業、貿易プラットフォーム事業者、政府それぞれの課題を整理しました。
その後、2024年6月には、政府が取り組むべきアクションプランを策定しました。アクションプランには、経済産業省だけでなく、法務省、財務省、国土交通省など、関係省庁が連携して取り組むべき事項を盛り込んでいます。

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現在は、このアクションプランに基づいて、各省庁が具体的な取組を進めている状況です。直近では、2025年2月にも検討会が開催され、進捗状況が確認されました。
真畑:貿易振興課の皆様は、荷主企業や物流会社の方々と直接コミュニケーションを取る機会もあると思いますが、貿易プラットフォームに対するユーザー側の意識に変化は感じられますか?
吉川:意識が変わってきている部分と、そうでない部分があると考えています。貿易DXは、課題意識は共有されているものの、具体的な取組に踏み出すタイミングが難しいというポイントがあります。
貿易手続を担当されている部署は、バックオフィス部門であるため、社内で予算を確保することが難しいという声も聞かれます。経営層の理解を得てトップダウンで進められれば、取組はスムーズに進むのですが、なかなかうまくいかないケースもあるようです。
企業はDX化の必要性自体は認識していますし、貿易DXもDX全体の一部であるという意識のもとでしっかり取り組んでもらえるよう、私たちも手助けしていきたいと考えています。
真畑:最初のステップを踏み出すのが難しいということですね。先行事例が少ないことも、心理的なハードルを高めている要因かもしれません。検討会の開催なども通じて、政府が長期的な視点で支援していくというメッセージが打ち出されていますし、私たちも事業を通じて後押しします。
