どんな時間軸で“両利きの知財人財”を育成しているのか

講演の終盤には、来場者との質疑も実施された。最初に挙がったのは、知財基盤構築のための「知財スペシャリスト」と「知財ストラテジスト」を両立した人財育成について。弁理士資格取得など、知識習得について一定の基準がある知財スペシャリストに対して、知財ストラテジストは基準が明確ではない。知財ストラテジストの養成までに、概ねどの程度の期間を想定しているのかというのが最初の質問だ。
泉井氏は「当初は10年ほどを要するのではないかと見込んでいましたが、現在は数年での養成を目指しています」と回答。人財育成に取り組むなかで、よりスピーディーな育成が求められていることを認識し、人財要件の洗い出しやスキルレーダーチャートの作成などを通じて案件のアサインを効率化し、習熟の早期化を図っていると述べた。
IPランドスケープの推進が現場の重荷にならないか
続いては、IPランドスケープの体制についての質問が取り上げられた。「IPランドスケープ案件での特許担当者と戦略担当者の役割分担はどのように行なわれているのか」という質問だ。
ここれについて、泉井氏は「IPランドスケープのテーマによって役割分担は異なります」と回答。例えば、複数の事業や技術を横断する取り組みについては、戦略担当者が中心的な役割を果たすことが多い。特定の事業や技術について深掘りする場合は、特許担当者がイニシアチブを握ることが多い。案件のスケーラビリティや規模に合わせて、適切なチームを構築するようにしていると泉井氏は述べた。
最後の質問もIPランドスケープについて。「そもそもなぜ専門性と戦略性を両立させたIPランドスケープの遂行が可能なのか」というもの。質問者は、特許出願などの実務に追われがちな特許担当者にとって、知財の戦略的な活用を推進するIPランドスケープは、業務の負担として捉えられがちだとした。そうしたジレンマを味の素グループはどのように乗り越えているのだろうか。
この質問に対して、泉井氏は共感を示す一方、「私はメンバーに常々、『すべての業務は戦略的でなくてはならない』と伝えています」と語る。実務をしっかりと進めることは非常に重要であり、それを効果的に進めるためにも戦略をしっかりと構築することが必要である。そのため、知財の戦略的活用を特許担当者自らが設計したうえで実務を進めていく。このような考えを浸透させることでIPランドスケープに前向きに取り組んでいると、泉井氏は述べて登壇を終えた。