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キリングループの事業ポートフォリオ変革を支えるFP&A──コーポレートと事業会社の「戦略対話」とは?

ゲスト:キリンホールディングス 財務戦略部長 松尾英史氏、経営企画部 主査 勝田龍介氏

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コーポレートと事業をつなぐ「戦略対話」

池側:そうなのですね。詳しく聞かせてください。

松尾:最大の特徴は、事業ごとに「10年先までの長期財務モデル」を毎年作成し、そこからのバックキャストで直近3ヵ年計画を決めている点です。

ローリング予測
資料提供:キリンホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

池側:キリンの事業ポートフォリオ経営をうまく実現するためのキャッシュアロケーションを中長期で考えていくのですね。これが機能するにはコーポレートと事業会社間の連携が不可欠ですが、「戦略対話」というコミュニケーションがあると伺いました。具体的なプロセスについてお聞かせください。

勝田:弊社では、春と秋の年2回「戦略対話」を実施しています。毎年5月ごろに行う「春の戦略対話」では、ホールディングスと事業会社の間で前回合意した中長期財務モデルの内容を確認し、外部環境変化や前提条件の違いによる変動があれば、その要因ならびに影響度と対策について、財務目標水準および取組み課題をアップデートします。

戦略対話
資料提供:キリンホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

松尾:10月の「秋の戦略対話」では、事業会社が翌年度を含む向こう3ヵ年計画の提示を行います。ここでは、春の戦略対話で更新した長期財務モデルとの隔たりに対する具体的な対応策や、リスクシナリオを含めた合意形成を行います。その後、11月には向こう3ヵ年の事業計画を提出、3月にはまた長期財務モデルを更新する、というサイクルで回しています。

 われわれは10年先を見据え、3年先の目指す姿を「ピン留め」するという考え方を採用しています。たとえば、2025年秋の戦略対話では2026年の計画をコミットしますが、その決定には2028年の状態(ピン留め)が必要です。もし直近の状況変化で3年先の目標達成が危ぶまれる場合は、そのギャップの要因を明確にし、必要に応じてアジャイルに計画を変更します。

池側:コーポレートが事業の変化や対応策を常に理解できる仕組みができているのですね。

何を共通言語にして、意思決定のスピードを上げたのか

松尾:この対話において共通言語となるのが、「KIRIN HEXAGON-VIEW」という6角形のモニタリング指標です。「収益力(事業利益、EPS)」「キャッシュ創出力(フリーCF)」「投資効率(ROIC)」に加え、「成長力(売上収益)」「経営資本(無形資産への投資)」「資本政策(配当、DEレシオ)」の6つの視点でバランスよく経営をモニタリングしています。事業会社から上がってくる提案事項もすべてこの「KIRIN HEXAGON-VIEW」の項目を意識しているので、意思決定が早くなります。

KIRIN HEXAGON-VIEW
資料提供:キリンホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

勝田:特に重視しているのがキャッシュアロケーションと投資規律です。営業キャッシュフローの創出を前提に、必要な設備投資や無形資産投資を行い、オーガニック成長を目指します。また、経営企画部と財務戦略部で費用計画や投資計画を精査し、限られた資源を戦略に基づき、状況変化に応じて、必要なタイミングで柔軟に資源を再配分するプロセスにも取り組んでいます。

キリンの財務経理
資料提供:キリンホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

池側:ROIC(投下資本利益率)の目標値などは設定されていますか。

松尾:はい、グループ全体でROIC10%を目指しています。事業会社レベルでは、P/L(損益計算書)だけでなくB/S(貸借対照表)のアクションも求めています。たとえば、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮や、不要資産の圧縮によって投下資本を最適化し、ROICを向上させる取り組みを現場レベルまで落とし込んでいます。

ROIC
資料提供:キリンホールディングス株式会社/クリックすると拡大します

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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