キャンバスを描くだけでは事業モデルはできない―「ビジネス要素の関係性」と「ストーリーテリング」

第2回:顧客価値を創造し、金銭を獲得する仕組みを描く

 前回は、ビジネスモデルとビジネスプランの違いについて触れました。新しい事業を企画する際、ビジネスモデルのデザインを必要とするか否かは、2つのシンプルな質問に答えることによって分かります。それは、➀既に市場に存在するプロダクトやサービスと類似するものを提供しようとするのか、②事業を継続するに十分な潜在顧客の存在を把握しているか、です。両方の質問に対して自信をもって「イエス」と答えることができない場合は、ビジネスモデルのデザインに取り組むことをお薦めします。
 今回ご紹介するツールは、多くの皆さんがご存知の「ビジネスモデルキャンバス」です。ここでは、事業企画の実践でこれを活用する際のポイントに焦点を絞ってお話していきましょう。

[公開日]

[著] 白井 和康

[タグ] ビジネスモデル デザイン思考 マーケティング リーン・スタートアップ jobs to be done 事業開発 ビジネスプラン

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ホームランバッターを9人揃えてもゲームに勝てるとは限らない

 キャンバスを使ってビジネスモデルを描写する目的は、大きく3つあります。それは、➀チーム内でビジネスモデルに関する議論が活発化するための共通言語をもつこと、②上空100mから自分たちの事業のビッグピクチャーを俯瞰すること、③ビジネスモデルイノベーションに対する基点をもつことです。ビジネスモデルキャンバスを描写することによって、事業を行う上で必要とされる9つのコンポーネントとのその相互関係を直感的かつ視覚的に理解することができます(図1)。

 ただし、ビジネスモデルキャンバスを作りさえすれば、「儲かる事業が作れる」わけでもなく、「画期的なイノベーションが生まれる」わけでもありません。新しい事業を企画する際、ビジネスモデルキャンバスの描写はプロジェクトの始まりであって、終わりではないのです。

ビジネスモデルキャンバスとデザインカード図1. ビジネスモデルキャンバスとデザインカード

 さて、実践での活用に際して重要なポイントを2つほど挙げましょう。1つ目は、皆さんの事業に必要とされる重要なコンポーネントを明確にするだけでなく、各々のコンポーネント間の相互関係を理解することです。実際、多くの方がこの点に関して無頓着なようです。野球は9人のプレイヤーが各々の役割を果たすと同時に、相互の連携プレイが必要とされるのと同様です。2つ目は、各々のコンポーネントの背後にあるメカニズムやドライバーについてチームで議論していくことです。思いついたものを貼り付けていくだけでは意味がありません。

 ビジネスモデルキャンバスの描写に当たり、弊社では12のコンポーネント間の相互関係を定義し、コンポーネントのメカニズムやドライバーを発見するための約220枚のデザインカードを活用していきます。これらは、有効なコンポーネントの発見とコンポーネント間の相互関係に関する理解を支援するものです。

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