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AIによる経営インパクト創出

ROIの視点を転換せよ。生成AIを業務ツールから「経営インフラ」へ変革する構造の作り方

後編

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AIエージェントとの協働で実現するベテランの知見の資産化

 もう1つ大きな変化が生まれます。それは、組織の暗黙知が形式知化されるという動きです。

 暗黙知の形式知化と聞くと、ベテランの知見を丁寧にインタビューして文書にまとめる。そんなイメージを持つ方が多いでしょう。AIエージェントが可能にするのは、その逆のプロセスです。

 たとえば金融機関のストラクチャードファイナンスでは、高度な契約ノウハウを持つ一握りの“生き字引”が契約書のドラフトとレビューを担っています。彼らのレビュー観点は複雑かつ多岐にわたり、契約全体を俯瞰して直感的にリスク箇所を見抜く。その判断基準を本人に言語化してもらうことも、ヒアリングで引き出すことも極めて難しい。

 しかし、AIエージェントにまずラフなレビュー結果を出させ、それに対して「ここは違う」「全然違う、そういうことじゃない」と修正指示を重ねてもらうことはできる。職場のOJTで若手を育てる感覚に近く、ベテランにとって自然な行為だからです。

 従来のシステム化がベテラン社員の経験知をうまく取り込めなかった根本には、要件定義の段階で言語化しきれなかった暗黙知がそのままシステムに入らず、完成後の修正も手戻りとして嫌われる構造がありました。AIエージェントとの協働は、この「最初に全部言語化せよ」という無理を、「使いながら少しずつ言語化する」プロセスに変えます。やり取りを繰り返す過程で、これまで言語化が難しかった判断基準や例外処理のノウハウが、プロンプトや評価基準として蓄積されていきます。

AIとのやりとりが、プロンプトや評価基準として蓄積
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 そもそも暗黙知が厄介なのは、人によって言うことが違い、同一人物の指摘であっても矛盾が生じるのが珍しくない点です。従来の要件定義では、こうした矛盾は会議室での合意形成で処理されてきました。AIエージェントとの対話は別のアプローチを提供します。矛盾する指示をエージェントがそのまま受け取れば、出力に不整合が生じる。その不整合を目にしたとき、指示を出した本人が「この条件ではAが正しいが、別の条件ではBだ」と条件分岐を言語化せざるを得なくなる。矛盾が可視化され、対話を通じて解消されていくこのプロセスこそが、AIエージェントによる形式知化の強みです。

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経営の“意志”が生成AI投資の成否を分ける

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この記事の著者

小林 誉幸(コバヤシ タカユキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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