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AIによる経営インパクト創出

ROIの視点を転換せよ。生成AIを業務ツールから「経営インフラ」へ変革する構造の作り方

後編

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 前編では、PoC(概念実証)の停滞を打破し、活用を加速させる「象徴的なユースケース」の設計について解説しました。現場で「これは使える」という確信が生まれた後、経営が次に目指すべきは、個々の効率化を横並びで積み上げるだけの「足し算」ではありません。後編では、生成AIを単なる業務ツールから、組織の知識を資産に変える「経営インフラ」へと昇華させるための道筋を描きます。業務の遂行がそのまま質の高いデータ蓄積へとつながり、ベテランの暗黙知が対話を通じて自然と形式知化されていく。こうした「知識の循環」を生み出し、真の経営インパクトを手にするための構造変化の設計図を提示します。

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生成AIの経営インパクトは効率化の足し算では生まれない

 前編では、大企業の生成AI活用が「PoC止まり」に陥る3つの落とし穴と、それを突破する「象徴的なユースケース」の設計について述べました。象徴的なユースケースで成果を出し、社内に「これは使える」という空気が生まれた。では、その先に何が起きるのでしょうか。

 多くの企業が次に取る行動は、成功事例を横に並べることです。提案書をAI化したら、次は契約書、次は稟議書。目標とする年間削減時間までユースケースを積み上げていく。しかし、個々の足し算をどれだけ続けても、経営会議で語れるレベルの変化にはなかなか届きません

 足し算の発想を捨ててください。生成AIの経営インパクトは、個々の効率化の総和にはありません。業務をAIとともにこなす過程で、組織の知識基盤が副産物として構築されていく。この構造変化こそが本当の果実です。成功が連鎖し、連鎖が知識基盤を生み、それがさらなる成功を可能にする。この循環が回り始めたとき、生成AIは業務ツールから経営インフラに変わります

 後編となる今回では、この循環がどのように立ち上がるかを順を追って整理します。

成功は縦横に連鎖する。組織文化を変える生成AIの活用

 象徴的なユースケースの成功は、2つの方向に連鎖します。

 1つは縦展開、同じ領域で技術的により高度な取り組みです。三菱UFJ銀行の法人営業部門では、2024年10月に約500名が提案書ナレッジシェアとして生成AIを使い始めました。当初はタグ付けやマスキングといったシンプルな処理でしたが、現場がAIの得手不得手の肌感覚を獲得し、同時にモデルの性能が向上したことで、2026年2月には提案書そのものを自動生成する機能へと進化。利用者は2,500名に拡大しました。前編で述べた動的なロードマップが活きるのは、まさにこの局面です。

 もう1つは横展開、他部門への染み出しです。三菱UFJ銀行でも、提案書ナレッジシェアの成功は契約書のリスク審査支援や行内照会応答の高度化といった他業務への展開につながっています。

 こうした全社的な横展開は、大企業がDX推進で長年追い求めてきた姿でもあります。では、なぜこれまでは実現しなかったのか。RPAやローコードが「市民開発」の担い手として期待されてきましたが、定着しなかった根本的な要因は、習熟コストの壁にあります。業務ロジックを組み込むには、ツール固有の操作体系を覚えなければならない。習熟が容易なエンジニアですら「作法を覚えるコストに見合わない」と敬遠していたツールを、現場社員が使いこなすのは困難でした。一方で、生成AIは“対話”という普段使いの言語で業務ロジックを組み込める。このハードルが消えたことで、我々が支援先で目にするのも、地方企業の現場ユーザーが自ら使い方を考えて活用しているという光景です。

 縦横の連鎖が進むと、現場から「業務プロセスを変えてよい」「AIに最適な形を教えてほしい」という声が自発的に上がるようになります。前編でAI Nativeな変化と呼んだ現象です。この変化の本質は、個々の効率化の積み上げではありません。「この業務もAIでできるのではないか」という思考回路が組織に埋め込まれていくこと、企業文化そのものの変容です。

 もっとも、文化が変わっただけでは経営インパクトには届きません。本当の果実はその先にあります。

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ROIの視点を転換せよ。経営が狙うべき真の“果実”

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この記事の著者

小林 誉幸(コバヤシ タカユキ)

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