KPI至上主義と同質性が仇に。日本企業が抱える“ジレンマ”とは?
宮森:創業者として自分の弱さを見せたり、相手に忖度しないコミュニケーションをとったりすることは、日本人の文化の中では少しハードルが高い部分があります。
ホフステードの文化モデルを見ると、日本は世界の中で「不確実性の回避」と「達成志向」が突出しています。不確実なことを嫌い、自分と違うものに対して不安を抱きやすいため「ルールどおり、みんな同じじゃないといけない」という心地よさを求める傾向があります。ゴールを決めたらKPIを追い達成していくことが大事とされるため、自分と違う視点を持つ人よりも、自分と似たような人と走ったほうが効率的だと思ってしまうのです。
佐宗:確かに、KPI至上主義みたいなところは日本のビジネス文化の中に深く根付いていますよね。イノベーションなんて不確実性の塊なので予測できないはずなのに、会社の中で実現させようとすると、ちゃんとKPI側まで落とさない限りプロジェクトが続かない組織なのだと言えます。
僕は最初米国が本社のP&Gにいましたが、そこは心理的安全性はないが知的誠実性は非常に高く、言いたいことを言って当たり前の世界でした。しかしその後、日本の人事系コンサル会社に転職した際、ハイコンテクストにお互いの気持ちを推し量らないと成立しない文化に直面し、かなり戸惑いました。日本企業は良くも悪くも、同質性を前提とした行動パターンが強いのだと実感しています。
宮森:だからこそ、多くの企業は多様性を受け入れているつもりでも「理念やパーパスは共有しているから私たちは同じだよね」という「最小化」の段階に留まっています。しかし、BANIの時代に入っていくと、違いを理解して掛け算し、新しいものを作っていく「共創」の段階が求められます。
渡り鳥の群れに異物を混ぜよ。適度な撹乱が組織を強くする
宮森:佐宗さんは著書の中で、組織を渡り鳥の群れに例えられていました。もしそこにまったく違う種類の鳥(異物)が入ってきたら、組織はどう反応するのでしょうか? 強いカルチャーや理念があるところに異物が入ってきたとき、本当の意味でイノベーションをもたらす会社はどう動くのか伺いたいです。
佐宗:渡り鳥のDNAには「方向感覚(ビジョン)」「距離感覚(バリュー)」「中心感覚(ミッション)」の3つがあり、それがあるから群れとして飛べます。そこに別の鳥を入れるというのは、自然界の「撹乱」と同じです。自然に任せているだけでは生態系は強くならず、人間が適度に手を入れて「異物」を入れることで生態系全体が強くなるという考え方があります。組織にも、意図的に適度な撹乱(エントロピー)をどう作るかがすごく大事です。エントロピーがまったく増えなくなった組織は、逆に先ほどの「ぬるま湯(最小化)」のモデルになって沈滞していきます。
宮森:一方で、多様性を経営戦略に使おうとして異物を入れようとしても、組織に受容の準備ができていないと逆反応が起き、違いを弾き出してしまうこともあります。せっかく仲間に入りたかったのに、結局優秀な人が一人で飛んでいって辞めてしまう。今はインバウンドの増加にともない、社会レベルでも異質なものに対する防衛や排斥の動きが見え隠れしています。違いを受け入れる土壌作りこそが、組織文化の最大の課題ですね。
