日立製作所は、製造業向けに設計業務を支援する「設計ナレッジシステム」を開発し、2026年7月より提供を開始した。熟練者の暗黙知をAIエージェントで形式知化し、3次元形状CADデータの自動チェックまでつなげることで、設計業務の効率化と品質向上を支援する。ナレッジの蓄積・活用を通じて設計品質と生産性を高める次世代AIソリューション群「HMAX Industry」の新たなラインアップに追加した。

設計業務では、熟練者の経験やノウハウ、技術文書、過去の不具合情報、3次元形状CADデータなど多様な情報を踏まえた判断が求められる。しかし、それらの知見は分散・属人化しており、設計ルールの活用や確認に多くの工数を要するうえ、確認漏れによる手戻りや品質のばらつきが課題となっていた。熟練技術者の不足や技術継承への懸念も背景に、製造業でのAI活用への期待は高まっている。Fortune Business Insightsによると、世界の製造業向けAIの市場規模は2025年時点で76億ドル、2026年の98.5億ドルから2034年には1,288.1億ドルまで拡大し、同期間の年平均成長率(CAGR)は37.9%と見込まれる。
日立は、設計者に知恵とひらめきを提供する空間のコンセプト「DIW(Design Insight Workspace)」を推進し、すでに熟練ノウハウを形式知化して品質保証業務を効率化する品質ナレッジシステムを提供している。今回のシステムは、DIWの中核ソリューションとして開発されたものだ。
機能面では、AIエージェントが熟練者の経験やノウハウ、過去トラブル・不具合情報などの技術文書をもとに暗黙知を形式知化し、プロンプト不要でテキストや図表から設計ルールを自動抽出して設計ナレッジとして一元的に蓄積する。蓄積したナレッジはチャットボットから自然言語で検索・参照できる。さらに、設計ルールから自動生成したプログラムと日立独自の「形状認識関数データベース」を組み合わせ、3次元形状CADデータ(STEP形式に対応)を自動チェックし、ルール違反の箇所を可視化する。「穴の取得関数」「曲げの取得関数」「距離測定関数」などを実行する形状認識関数をあらかじめデータベース化して組み込んでいる点が特長で、自然言語で入力したルールから形状チェック用プログラムを自動生成する。
開発に際しては、日立ハイテクで自ら最初のユーザーとして実効性を検証する「カスタマーゼロ」の取り組みとして、プロトタイプを用いた実証テストを実施した。板金・製缶図面の検図作業を対象に、曲げ作業や打ち抜き・切断加工が困難な箇所や寸法不備などを自動で100%抽出し、不具合のある設計データが後工程に流出する回数を減らす効果を確認したという。
これにより、確認工数や目視検図の負担を削減し、不具合の見落としや手戻りを防止する。運用で得た新たな知見をナレッジへ継続的に反映し、組織全体の設計品質の平準化と技術継承を支援する狙いだ。日立は今後、設計や製造、保守、品質保証の業務全般を網羅するサービスへ展開し、製造BOM(部品表)やBOP(製造工程表)の自動生成、類似形状の高速検索によるバーチャル試作検証などの開発も進める予定としている。
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