なぜNECは過去最高益を達成できたのか。雨宮CFOと語る、AI時代のCFO像とコーポレート機能の進化
登壇者:日本電気株式会社 雨宮邦和氏、一般社団法人日本CFO協会 日置圭介氏
変革の基盤を創る「人・カルチャーの変革」とグループファンクション化
多くの日本企業が「AIの導入」や「AIによる企業変革」を叫びながらも足踏み状態から抜け出せない背景には、システムやツールの問題以上に、組織文化や社風という「カルチャー変革」の高い障壁が存在する。いかに優れたテクノロジーを導入しても、現場や経営層がそれを使いこなして自らの業務プロセスを変革する柔軟性や危機感を持っていなければ、宝の持ち腐れとなってしまう。
NECが現在推進している高度なAIネイティブ経営は、一朝一夕で成し遂げられたものではない。その根底には、2012年の経営危機を契機として10年以上にわたり脈々と続けられてきた「人・カルチャーの変革」の歴史が存在する。2018年からのカルチャー変革「RISE 1.0」では「変化を好まない社風」を払拭して変化を受容する姿勢を育み、2021年の森田隆之社長就任以降の「RISE 2.0」では「変わり続けることが文化」となる境地を目指して全社的な構造改革を進めてきた。
この組織文化の変革と並行して進められたのが、コーポレート機能の集約と高度化である。グループ内の間接業務を「NECマネジメントパートナー」へ集約・シェアードサービス化(SSC)し、業務の標準化や効率化を徹底した。さらに、単なるコスト削減のためのシェアード化から、グループ全体を一元的に管理・変革する「グループファンクション(GF)化」へと進化させ、コーポレート機能そのものを「稼ぐスタッフ」「企業価値を高める組織」へと再構築してきたのである。
これは、自社が最初の顧客=実験台となる「クライアントゼロ」という考え方に基づいており、社内で実践して成果が出たモデルをパッケージ化し、パートナーと共にお客様へ提供することで、コーポレート機能自らが収益を獲得する組織へと進化していくと雨宮氏は語る。
雨宮氏は、自らのキャリアを振り返りつつ、こうした全社的な変革の波が現場や経営に与えた影響と、それを乗り越えるための強いリーダーシップの重要性について言及した。
「私自身、1991年に入社してから長年、営業や金融システム、パブリック領域といった事業部門の最前線にいました。経理や財務の専門知識ゼロの状態で2026年4月にCFOへ就任したわけですが、事業側にいた当時、全体の標準化(Fit to Standard)を進めるコーポレートの改革を見ていて『現場に負担がかかり大変だ』と感じたことも事実です。伝票処理などで一時的に大きな工数がかかる山もありました。しかし、社長の森田(隆之氏)やCAXOの小玉(浩氏)が強力なリーダーシップで『これを乗り越えれば必ずメリットが出る』と推進し切ったことで、データが『ワンデータ』として一元管理され、今のAI活用の強力な土台が完成したのです」(雨宮氏)
過去の痛みを伴う変革をやり遂げ、データ基盤と「変化を恐れない文化」を定着させたことこそが、同社がAI時代において圧倒的なスタートダッシュを切ることができた最大の要因と言えるだろう。
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