なぜNECは過去最高益を達成できたのか。雨宮CFOと語る、AI時代のCFO像とコーポレート機能の進化
登壇者:日本電気株式会社 雨宮邦和氏、一般社団法人日本CFO協会 日置圭介氏
次世代ファイナンス組織のカタチと新たな人的役割
AIネイティブな企業変革が進む中で、財務経理や経営企画といった従来のFP&A部門は、どのような役割へと進化を遂げるべきなのか。NECが描く「AIネイティブ時代の経営管理ビジョン」では、従来のFP&AとAI時代のFP&Aの差異が明確に整理されている。
従来のFP&Aは、過去データの収集、正確な計算、Excelによる集計、予実ギャップのレポート作成といった「作業」に時間の約70%を費やし、考察や戦略検討には30%程度しか充てられていなかった。しかし、AI時代のFP&Aにおいては、データの収集・一次分析・業績予測の作成はAIエージェントに完全委任され、時間配分は「作業0%/変革推進100%」へと劇的にシフトする。
ここで求められるコア能力は、単なる数値計算力から、AIが弾き出した分析結果の文脈を読み解いてビジネスの戦略ストーリーへ落とし込む「ストーリーテリング力」や、事業部門を巻き込んで組織を動かす「変革推進力」へと完全にシフトする。FP&A担当者は、意思決定の初期段階から事業部に伴走し、共創しながら最適解を導き出す「Co-Pilot(副操縦士)」としての役割を果たすことになるのだ。
同時に、AIが出力した予測の妥当性を検証し、前提条件やプロンプト(問い)を設計する「指揮者・監査役」としての視点も欠かせない。AIがどれほど進化しても、最終的に顧客や社会に対する説明責任(アカウンタビリティ)を果たすのは「人間」だからである。
2030年に向けた次世代CFO像とリーダーへのメッセージ
セッションの終盤、議論は「2030年に向けた次世代CFO像と、バックオフィス・ミドルマネージャーが今取り組むべきアクション」へと及んだ。

従来のCFOは、決算処理や資金調達、コンプライアンス維持といった「守り」のイメージが強かった。しかし、AIネイティブ時代における次世代CFOは、ファイナンスの枠組みを超えてコーポレート機能全体の高度化を統括し、人的資本とAI資本を融合させて自ら「事業と企業価値を創出するリーダー」であることが求められる。
自ら事業部門での長年の経験を持ち、異例の抜擢でCFOに就任した雨宮氏は、バックオフィスに携わるリーダー層やミドルマネージャーに向けて、次のような力強い提言とメッセージを贈った。
「コーポレートスタッフは、企業の中で最も『経営判断に関わるナレッジ』を持っている存在です。そのナレッジを持つ人たちが自らAIを使いこなして新しい業務プロセスを作り出していくこと自体が、個人の市場価値を飛躍的に高め、ひいては社会へのとてつもない貢献になります。AI時代においては、もはや『現場』と『コーポレート』という壁や、セクショナリズムで仕事を分断することはできません。全員が一体となってAIという新しい資本を活用し、新たな事業と価値を創造していく姿勢が何よりも大切です」(雨宮氏)
モデレーターの日置氏も、対談の総括として「1社だけで悩み、個々に変革を進めるのには限界がある。先進的な取り組みを行っている企業同士が知恵を出し合い、オープンに連携し合っていくことが、日本企業全体の競争力を底上げする鍵になる」と語り、セッションを締めくくった。
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