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Biz/Zine Day 2026 Autumn

なぜNECは過去最高益を達成できたのか。雨宮CFOと語る、AI時代のCFO像とコーポレート機能の進化

登壇者:日本電気株式会社 雨宮邦和氏、一般社団法人日本CFO協会 日置圭介氏

栗原 茂(Biz/Zine編集部) [著] / 長谷川 梓 [写]

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AIエージェントと共働する「AIネイティブ経営」の現場

 カルチャー変革とデータ基盤の整備を果たしたNECが現在取り組んでいるのが、自らの組織を実験場として先進技術を実践・検証し、その成果を顧客や社会に還元する「クライアントゼロ(Client Zero)」の取り組みである。

 同社では全社的なAI活用を急速に推進しており、グループ社員約10万人のうち既に9.5万人が社内生成AIサービスを利用している。さらに、社員自らが業務に合わせて作成した「専門家AI」は4,000本近くに達し、利用回数は約46万回超、累計の業務削減工数は50万時間を突破した。特に財務・経営管理を担うFP&A(Financial Planning & Analysis)領域においては、業務工数を60%削減するという驚異的な成果を上げている。

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資料提供:日本電気株式会社/クリックすると拡大します

 その具体的な象徴が、役員会議などで活用される「CFOレポート」と「経営コックピット」の自動生成である。従来、本体および関連会社を含め多数のメンバーが多大な工数をかけて手作業で作成していた業績分析やリスク予測だが、現在はAIが各種データを統合し、部門別ブレイクダウン、AI推測シナリオ、着地予測、株価推移、さらには「CFOメッセージ」の原案に至るまでを自動生成する。本セッションでは、全社の重要指標をビジュアル表示し、CEOのアバターが最新状況やリスク予兆を音声でアナウンスする「経営コックピット」のデモ実演が紹介された。

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資料提供:日本電気株式会社/クリックすると拡大します

 さらに同社は2026年8月、AIエージェントのみで構成された「AI自律組織」の設立を発表した。これは人間とAIの協働を一段上のレベルに引き上げる先駆的な試みである。雨宮氏は、AI自律組織との日常的なやり取りの臨場感を次のように明かす。

「会議の場では、私たちが議論して喋っているその瞬間に、AI自律組織からリアルタイムで成果物やデータが出てきます。私たちの確認やインプットが入ることでAIの精度はさらに上がり、会議を1回重ねるごとに成果が見違えるように進化するのです。AI組織には4つの階層があり、AI自身が名前をつけ、エンゲージメントの測定や昇降格まで行われています。『人間が判断を遅らせているのがボトルネックだ』といった指摘までAIから飛んでくるほどです」(雨宮氏)

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資料提供:日本電気株式会社

 AIが出した高度な提案や回答に対し、人間側の理解が追いつかない場面すら出てきているという。そのため、専門的なAIの示唆を噛み砕いて人間に伝える「通訳」の役割や、AIが出した判断をいかに吟味しつつ迅速に実行に移すかという、新たな人的アビリティが求められている。

人的資本とAI資本の最適配分「AIキャピタル」という新たな概念

 AIが自律的に分析や提案を行い、業務プロセスに組み込まれる時代において、企業経営の構造そのものをどう再定義すべきか。NECはこの問いに対し、経営リソースを「人的資本(Human Capital)」と「AI資本(AI Capital)」の2軸で捉え、双方が最適に組み合わされた新たな企業OS(Operating System)の構築を提示している。

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資料提供:日本電気株式会社/クリックすると拡大します

 ここで定義される役割分担は明快だ。人間(Human Capital)の役割は、社会や市場の変化を踏まえた「方向性の提示(0から1の変革の創造)」、現実を動かすための「最終承認(意思決定)」、そして倫理やリスクを担保する「統治(ガバナンス)」に特化する。一方、AI(AI Capital)の役割は、膨大なデータの集約・分析、シナリオの自動生成、プロセスの自律遂行といった「変革の加速(1から無限大への拡張)」を担う。

 この概念を機能させるためには、社内のインフラ、データ構造(オントロジー)、セキュリティ、AIエージェントの網羅的なアーキテクチャが必要となる。同社では、グローバルパートナー(Microsoft、Anthropic、Palantir、Celonis等)の先端技術や生成AI約40種類を最適に組み合わせたプラットフォームを社内で構築・実践しており、この実践知を「AI Platform Service」として外部の顧客へも提供を開始している。

 モデレーターの日置圭介氏は、AI資本の導入が企業組織に与える構造的インパクトについて次のように分析する。

「産業革命の時代、企業は大規模化しましたが、人間には認知限界や処理限界があるため、それを補うために、ピラミッド型の階層組織や機能別の体制を作り上げました。しかし、AIがその認知や処理の壁を埋めてくれるようになれば、フラットな組織構造に移行でき、全員で事業を作りにいくことが可能になるかもしれない。従来のバックオフィスや機能別スタッフ部門という概念そのものが、根っこから再定義される時代に来ています」(日置氏)

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一般社団法人日本CFO協会/日本CHRO協会/日本CLO協会エグゼクティブ・フェロー 日置圭介氏
PwC、IBM、デロイト、BCGでコンサルティングに従事。デロイトでは執行役員パートナー、BCGではパートナー&アソシエイトディレクターを務めた。現在は、一般社団法人日本CFO協会/日本CHRO協会/日本CLO協会 エグゼクティブ・フェロー、株式会社CFO本部取締役、リ・デシグナーレ合同会社代表、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師、他、複数企業でアドバイザーや顧問を務める。経済産業省「グローバル競争力強化に向けたCX研究会」座長、同「産業構造審議会 価値創造経営小委員会」委員など歴任。著書に、『ワールドクラス の経営』(共著、ダイヤモンド社、2020年)などがある。

 雨宮氏もこれに強く同意し、AIを資本として捉える上での実務的な管理指標やコスト観点についての最新課題を付け加えた。

「AIエージェントが部下になれば、指示出しの得意なスペシャリストが一人で巨大な成果を出せるようになるなど、組織作りの前提が変わります。ただし、実務面ではトークンコスト(AI利用料)の爆発的な増加という現実的課題もあります。中期計画の策定時には想定していなかった規模で利用が進むため、このコストをどう適切にマネジメントし、最適配分(トークンマネジメント)していくかも、これからのCFO組織にとって重要なアジェンダになります」(雨宮氏)

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次世代ファイナンス組織のカタチと新たな人的役割

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栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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