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生命の進化の系譜はヒトから「テクニウム」へと移る(ケヴィン・ケリー『テクニウム』)

[公開日]

[著] 弦音 なるよ

[タグ] 事業開発 テクノロジー オープンサイエンス オープンイノベーション

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テクニウムはどこへ向かうのか

 テクニウムは我々人間の「言葉」から進化を始めたが、同じく言語を持つとされるイルカや、冒頭で紹介したクリボウシオーストラリアマルハシからも、テクニウムは生まれるのだろうか。

 それは難しいと考える。少なくとも現状のイルカや鳥では、言語の次の段階である「文字の筆記」へのパラダイムシフトを起こせそうにないからだ。

 原始的な言語を獲得したとしても、それを一定水準の知性に高めるためには、脳容積を増やさねばならない。「心」のメカニズムの解明を試みた『フューチャー・オブ・マインド』(2015)では、知性を発揮するために必要になる脳構造を段階的に示しており、拡大した脳容積を支え、発話するには、結局人間と同じような身体的特徴にならざるを得ないと指摘している。

 したがって、私はテクニウムが人間に始まったことは必然であると考える。

Human Evolution? / bryanwright5@gmail.comHuman Evolution? / bryanwright5@gmail.com

 ちなみにこの「必然」というのは、テクニウムの未来を予想する上で重要な前提となる。 本書はテクニウムの進化を決める要素について、再び生命の進化をアナロジーに分析をする。本書によれば、我々が太古の原子からヒトにまで進化してきたのは必然であり、時間を巻き戻してやり直しても、同じ結果を得ることができるという。進化の原理にはいかなる力が働いているのか、テクニウムの未来を予想することはできるのか、それはいかなる姿なのか。これについて次の記事にて、本書の仮説を紹介したい。

「生命」というアナロジー

 ところで、機械やテクノロジーを生命と対比する手法は、本書のほかに『フューチャー・オブ・マインド』でも見られた。ある事象を最先端科学からのアナロジーとして考えるのはよく行われる手段だ。例えば19世紀のロボットのイメージはブリキと蒸気と歯車で、21世紀の人工知能は人の脳構造を模倣している。

 本書や『フューチャー・オブ・マインド』が生命のアナロジーを使うのは、この分野が現在進行形の最先端という背景もあるのだろう。逆に言えば、生命の秘密がいままさに解明されつつあるからこそ、テクニウムの正体や未来を考えられるようになったのかもしれない。

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