テクノロジーとはいったい何か。『テクニウム』(2014)はこの疑問への答えを探るなかで、いくつかの仮説を述べている。
- 生命を「自己生成可能な情報システム」としてみると、ヒトの次の進化形は「テクニウム」となる
- イノベーションやテクニウムには事前に決められた固有の順番があり、必要な条件が全て揃ったとき新しいテクノロジーが生じる
テクニウムとは、テクノロジーが大規模で相互に結ばれたシステムを指す。霊長類まで続いた生命の進化の続きにはテクニウムがあり、時計を太古の地球に巻き戻してやり直しても、再びヒトやインターネットがあらわれるという。この仮説について次の記事で紹介した。
本書の仮説が正しいとしてやっぱり気になるのは、進化したテクニウムが今後どこへ向かうのかだ。進化に固有の方向があり、それが必然であるならば、今後向かう先も予想できるはず。テクニウムはどんな未来を引き起こすのか。
本書はテクニウムが、エクストロピーの増大と非物質化、自己増幅の方向に向かっていると述べている。この予想から想起されるのはテクニカル・シンギュラリティだ。テクノロジーの進歩の担い手が人間から人工知能やポストヒューマンに変わる、という予想で、有名なところではレイ・カーツワイルの「2045年問題」がある。
私は「2045年問題」には異論があるが、本書『テクニウム』の理論に基づくと、テクニカル・シンギュラリティが起こるべくして起こるように思えてならない。本書の予想を紹介しながら、この問題について考えてみる。
Summary Note
テクニウムの進化が起こる場所(本書より)
- 生命とテクニウムの進化は、エクストロピーの増大と非物質化に向かう
- テクニウムは自己増幅し、進化する領域自体を変えていく
- ムーアの法則は、エネルギーの制約を受けない縮小化可能領域に働く
テクニウムの進化がもたらす近未来(本書より)
- 多様性の爆発的増加が「選択支援テクノロジー」を発達させる
- テクニウムの相互性発達がオープン化を促す
- テクノロジーの偏在化がパラダイムシフトをもたらす
- UNIXカーネルはテクノロジーの世界のゴキブリとなる
- テクノロジーの自己増殖が止められなくなる
- テクニウムがヒトから独立する
ヒトの次世代を担うのは人工知能か、ポストヒューマンか
- 選択支援テクノロジーは確かにヒトを超える人工知能を生もうとしている
- その一方でヒト自身による自己増殖も始まろうとしている