Scienceを社会に応用したものがTechnology、人間の内面を探究したものがArt、ではDesignとは何か?
まず、株式会社コンセント代表取締役社長の長谷川敦士氏が登壇した。長谷川氏は「デザインする組織」という今回のイベントのテーマについて、「この問題については決して正解が見えていて、これをやれば完全に解決というわけではない」として、様々な事例や取り組みを通じて論点を洗い出すことが重要だと述べた。
なぜ今、ビジネスにおいて「デザイン」が注目されているのか。そもそものデザインの定義と変容、つまりどこまでがデザインなのか、というグローバルな議論に立ち返る。
長谷川氏が持ち出したのは、ジョン・マエダ氏によるテクノロジー業界のトレンドを扱った「Design in Tech Report」。新しいサービスが立ち上がる中で、いかにデザインが活用されているか、その時の着眼点はどこなのかを簡潔にまとめている。
2017年度版*1のトレンドは「Computational Design」「DESIGN→DE$IGN」「Design Needs Desigers」「Shaping Voice」「Design Is By Nature, Inclusive」の5つだ。
このレポートがそもそも注目されたのが、「Design M&A Activity」という、コンサルティングファームによるデザインエージェンシーの買収を時系列に示し整理したもの。アクセンチュアによるFjordの買収、キャピタルワンによるAdaptive Pathの買収などが有名だ。
このような潮流がある中で、デザインという言葉が何を示しているか。長谷川氏は1枚のスライドを示しながら説明する。
ArtやScienceといわれているものは、真理の探究を行うもので、どちらかといえば自分で興味を持ってやる。その時に人間の内面や文化について真理の探求をするのが「Art(芸術)」であり、対象が自然・外面なのが「Science(科学)」である。Scienceで得られた知見を社会に応用したものが「Technology(工学)」であり、ArtやTechnologyといった知見を、人を動かす技術として応用すると、それが「Design(デザイン)」になる。
モノのスペックをあげて売り上げを伸ばすことを考えていた「Goods-Dominant Logic」では、工学的なことが企業の中で追求すべき分野とされていたが、「いかに人へサービスを提供するかということに関心が移ってきている」と長谷川氏は言う。Goods-Dominant LogicからService-Dominant Logicへ、言い換えればTechnologyからDesignへと企業の関心が移行したことが、デザインが注目を浴びる理由になっているわけだ。
*1: Design in Tech Report 2017 https://www.slideshare.net/johnmaeda/design-in-tech-report-2017