SaaSビジネスにおける重要な指標“ARR”とは?
NetflixやAdobeなどに代表される、サブスクリプションビジネス。
従来のビジネスプロセスを直線型と表現するならば、サブスクリプションは顧客を中心とした円型である。関連部署間との連携などにより複雑性は増すが、マネタイズの機会は、プロダクト販売を起点とする直線型プロセスよりも増える傾向にある。
さらに本セッションのスピーカーとして登壇したZuora Inc.のIain Hassall氏は、「サブスクリプションビジネス成功のためには、組織体制や財務に関しても頭を切り替えなくてはならない」と指摘する。
Zuoraは、売上高や純利益といったこれまでの財務指標では説明しきれない成長をしてきました。現在私たちが指標とするのは、継続的なARR(年間収益)です。
ARR(Annual Recurring Revenue)とは、SaaSビジネスにおける重要な指標あり、新規契約・顧客のプラン変更・解約などをすべて含めた収益のことだ。Zuoraでは、ARRを年間定期収益、つまりサブスクリプション契約の1年間の収益額と定めている。また、月次の収益はMRR(Monthly Recurring Revenue)と呼ぶ。
さらにHassall氏は、ARRをもとにした成長のための数式を紹介する。
ARRn-Churn+ACV+/-FX=ARRn+1
これは、ARRを基準として、次年度のARRを算出する式である。
Churnとは、顧客の解約や価格の低いプランへの切り替えといったダウンセルを指し、ACVは新規契約を表す。
では、サブスクリプションビジネスにおける予算配分の方法を見てみよう。従来は売り上げ目標に対してコストを算出するが、サブスクリプションモデルの場合、まず継続的に掛かる支出(Recurring Expense Margin、以下REM)と成長のための支出(Growth Expense) の2つに分けてアロケートする。
Hassall氏によれば、既存顧客の契約を維持するための費用であるREMには、データセンターの運用コストやR&Dなどを含む。そしてGrowth Expenseは、新規顧客獲得や新しいサービスプランなどアップセルにつながる支出が入るという。営業・マーケティング・カスタマーサクセスに関するコストも、こちらの枠組みに含まれる。
どちらの支出を重視するかで、サービスの成長戦略は変化する。たとえば、サービスを安定的に運営したいということであればREM、新規契約を積極的に伸ばしていきたいのであれば、Growth Expenseへコストを寄せるなどが考えられるのだ。