OKR導入の2つのプロセス──型どおりのOKR導入がもたらす上意下達の危険性
堀江真弘さん(以下、敬称略):この連載について、まずは少し振り返りをさせてください。第1回では、企業を成長させるために、どうやってOKRを使うのかを大枠で整理しました。第2回は、会社のフェーズや文化のフェーズによって、どのようにOKRを導入していくか説明しました。そして第3回で人事評価について触れながら、OKRを人材育成の仕組みに落とし込む方法について書きました。これを読んでくださっている皆さんは、ある程度OKRについての知識があるという前提でお話をさせていただければと思います。
及川さんは先進的な外資系IT企業での経験が豊富にありますよね。先進性のある企業がどのようにOKRをつくっているのか、そのプロセスについてお伺いしたいと思います。
及川卓也さん(以下、敬称略):まずは経営陣が全体のビジョンやミッションから年間のOKRをつくるプロセスが王道といえます。
堀江:最初にトップが大筋のビジョンや戦略を見せるということですね。例えばそのとき、部門ごとに成果を割り当てるのでなく、あえて部門をまたいで協業するようにKRを設定することもあるのでしょうか?
及川:もちろんあります。企業を大きく成長させていくためには、社内でも事業や部門をまたいだ連携が必要になります。そこで、経営層からのトップダウンで、部門連携を促す方針が出てくるわけです。
一方、ボトムアップ型として、部門連係に関するアイデアが現場から出てくることがあります。マネジメント層はそれを拾い上げ、OKRに組み込むことができるようになることが理想だと考えています。
堀江:ボトムの声をきちんと拾い上げる。
及川:そうです。プロダクト開発で例えます。スマホアプリとウェブ、両方のインターフェースを開発している会社で、アプリとウェブで開発部署が分かれています。どちらかの開発現場からアイデアが出てきて、ユーザー体験を統一して提供した方がいいという話が部署内であがったとします。そうすると、そのアイデアを一緒に実現させるために、もう一方の部署に対して提案することが求められます。企業はその提案を積極的に拾い上げるべきだと考えているのです。
堀江:それはわかりやすい例ですね。では、たとえば現場から出てきたボトムアップ型のアイデアが、経営陣の戦略に“変更”をもたらすことはあるのでしょうか。
及川:ありえますね。むしろ、経営陣は現場からのアイデアを促さなければなりません。全社のOKRを設定し、それに紐づくように部署・個人のOKRを設定するという型通りの方法だけだと、トップダウンにしかなりません。そうなるとOKR本来の目的から反してしまいます。現場のスタッフまで腹落ちできる目標設定をすることが大事だとすると、自発的なボトムアップを企業の文化にしなくてはなりません。
堀江:そうですよね。
及川:しかし、日本の企業には真面目な方が多く、OKRをルール通りにやろうとしがちです。その結果、上意下達の管理制度で終わってしまう可能性が非常に高くなってしまうのです。
※ボトムアップの声をどのように拾い上げるかについては、P3で明らかになります。