経営学の権威ヘンリー・ミンツバーグと野中郁次郎、伊丹敬之が語る、日本的経営の復権とコミュニティシップ

ヘンリー・ミンツバーグ教授 来日講演レポート【前編】

 「人、組織、社会の関係を根本から問い直す」をテーマとしたイベントが、組織開発コンサルティング会社のジェイフィール主催で、2019年5月29日に東京・渋谷にて開催された。経営学の権威として知られるヘンリー・ミンツバーグ教授がカナダから来日し、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏、国際大学学長の伊丹敬之氏とともに登壇。日本における企業の存在意義や現在の課題、そしてこれからの社会に向けての提言などを語り合った。前編では鼎談前の共有として、各氏による日本の「人と組織と社会」の見え方や課題などについて紹介する。

[公開日]

[講演者] ヘンリー・ミンツバーグ 野中 郁次郎 伊丹 敬之 [取材・構成] 伊藤 真美 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 企業戦略 アート サイエンス クラフト SECIモデル コミュニティシップ

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伊丹敬之氏が語る、リーマン・ショックと東日本大震災が日本的経営に与えたものとは

 まず伊丹氏が「平成30年間の日本企業の経営を振り返ると、驚きの発見があった」と口火を切った。「日本企業がこぞって大きな傷を受けた1991年のバブル崩壊から、組織や社会が大きく変わったように見える。しかし、最終的に日本企業の基盤は何も変わっていないことがわかった」と語る。

 確かに1991年以降の“失われた20年”と呼ばれる期間、バブル崩壊による財務的損害は大きく、低迷もやむなしといえる状態が長く続いた。しかし、それ以上のものとして伊丹氏が指摘するのが「心の傷」だ。「バブルを起こしてしまったことに対しての反省・後悔」から日本的経営への自己疑問が生まれたこと。そして、ソ連の崩壊で米国型経営が勝利したかのような印象のもと、ジャパンバッシングにより2つ目の自己疑問が生まれたこと。

 「心の奥底で『日本的経営』を否定しきれぬまま、米国的経営を中途半端に取り入れたことで更に問題を複雑化してしまった」と伊丹氏は語る。

 そこに大きな衝撃を与えたのが、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災だ。リーマン・ショックで崖から落ちるように生産水準が下がり、復調の兆しが見えていたときに東日本大震災が追い打ちをかける。しかし、伊丹氏は「この2つのショックが日本企業をシャキッとさせた」と分析する。

絆の大切さを強く認識し、感情によるつながりが組織を強くする。そんな日本的経営も『けっこういいものではないか』と見直されるきっかけになった。この頃から日本的経営への回帰が進むようになった

タイトル国際大学学長、一橋大学名誉教授 伊丹 敬之氏

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