伊丹敬之氏が語る、リーマン・ショックと東日本大震災が日本的経営に与えたものとは
まず伊丹氏が「平成30年間の日本企業の経営を振り返ると、驚きの発見があった」と口火を切った。「日本企業がこぞって大きな傷を受けた1991年のバブル崩壊から、組織や社会が大きく変わったように見える。しかし、最終的に日本企業の基盤は何も変わっていないことがわかった」と語る。
確かに1991年以降の“失われた20年”と呼ばれる期間、バブル崩壊による財務的損害は大きく、低迷もやむなしといえる状態が長く続いた。しかし、それ以上のものとして伊丹氏が指摘するのが「心の傷」だ。「バブルを起こしてしまったことに対しての反省・後悔」から日本的経営への自己疑問が生まれたこと。そして、ソ連の崩壊で米国型経営が勝利したかのような印象のもと、ジャパンバッシングにより2つ目の自己疑問が生まれたこと。
「心の奥底で『日本的経営』を否定しきれぬまま、米国的経営を中途半端に取り入れたことで更に問題を複雑化してしまった」と伊丹氏は語る。
そこに大きな衝撃を与えたのが、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災だ。リーマン・ショックで崖から落ちるように生産水準が下がり、復調の兆しが見えていたときに東日本大震災が追い打ちをかける。しかし、伊丹氏は「この2つのショックが日本企業をシャキッとさせた」と分析する。
絆の大切さを強く認識し、感情によるつながりが組織を強くする。そんな日本的経営も『けっこういいものではないか』と見直されるきっかけになった。この頃から日本的経営への回帰が進むようになった