『アフターデジタル』と『チャイナ・イノベーション』著者が語る、中国企業に学ぶ顧客起点のDXの本質とは

ゲスト:ビービット 藤井保文氏、野村総合研究所 李智慧氏【前編】

 オフラインがデジタルに包含される「OMO(Online Merges with Offline)」時代におけるビジネスの指南書として、大きな注目を集める『アフターデジタル』。本書にはアリババやテンセントといった“アフターデジタル先進国”中国の企業が数多く紹介されている。一方、先んじて出版された『チャイナ・イノベーション』では、アリババやテンセントはもちろんのこと、その後を追う数々の先端技術企業が登場。国家戦略のもと、明確に「イノベーション大国」へと舵を切る中国の計り知れない底力を実感させる一冊となっている。
 今回は著者の藤井保文氏と李智慧氏をゲストに招いた。中国におけるイノベーションとデジタルトランスフォーメーション(DX)の実態と、日本企業への提言を伺った。前編では、“二大プラットフォーマー”アリババとテンセントを中心とした中国におけるイノベーションと、そこから日本企業が得るべきマインドセットなどについて、著者両名が語る。

[公開日]

[語り手] 藤井 保文 李 智慧 [取材・構成] 大矢 幸世 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 デジタルトランスフォーメーション 顧客体験 アフターデジタル

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“デジタル先進国中国”をミクロ・マクロ双方の視点で分析

野村総合研究所 李智慧氏(以下、敬称略):本日はよろしくお願いいたします。藤井さんは普段は中国にいらっしゃるのですか?

ビービット 藤井保文氏(以下、敬称略):そうですね、一ヶ月のうち3分の2は上海にいます。私がビービットに入社したのは2011年なのですが、2014年に台北支社へ異動し、2017年からは上海支社に勤務しています。金融や教育、ECといったさまざまな企業サイトのUI/UX改善に携わりつつ、最近では「USERGRAM(ユーザグラム)」という顧客行動分析ツールをSaaSで提供していて、その両軸で顧客にコンサルティングを行なっています。

李:中華圏では欧米・日本企業含めて外資系企業が参入するハードルもかなり高いはずですが、貴社はどういった点に強みがあるのですか?

藤井:当社の場合、日本の方法論をまずは台湾で成功させたという実績があり、ポジショニング的にビジネス戦略とデザインシンキングの方法論を掛け合わせつつ、NPS(顧客推奨度)に強みがある。上海支社は30名ほどの拠点ですが、日本人スタッフは私含めて2名だけ。クライアントの6割は家電メーカーグループの「美的集団」や現地の大手銀行、保険会社などになります。

 私自身はそれ以外の日系企業向けにデザインコンサルティングを行なっています。いわゆるプロダクト指向からエクスペリエンス指向へ変革するにあたって、いかに顧客体験を作っていくかにフォーカスしています。

李:私は2002年に野村総合研究所へ入社してからすぐは、システムコンサルタントとして、ずっと日本国内向けに霞が関と大手町を行き来するような仕事でした。その後、シンクタンク部門に兼務し、中国を対象に調査研究を続けていました。

 2012年ごろ、消費者向けの金融について調査していたところ出会ったのが「Alipay(支付宝)」でした。当時はまさにモバイル決済の黎明期だったですが、そこからフィンテックやAIといったイノベーションが急速に発展し始めた。その頃からずっと中国イノベーション企業に関する研究を続け、昨年9月末にその集大成として『チャイナ・イノベーション~データを制する者は世界を制する~』を出版しました。

李智慧株式会社野村総合研究所 未来創発センター グローバル産業・経営研究室 上級コンサルタント 李 智慧氏
中国出身、大手通信会社を経て、2002年に野村総合研究所に入社。日本と中国の金融制度の比較研究、フィンテックやAIなどの先端企業に関する調査研究が専門。中国のフィンテック・ウォッチャーの第一人者。著書に『チャイナ・イノベーションーーデータを制する者は世界を制する』、『FinTech世界年鑑 2015-2019』(中国編)(共に日経BP社)がある。

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