経営戦略の中で人事戦略が最も重要である──カゴメCHO有沢氏はなぜ「社長の年収」を全社公開したのか?

ゲスト:カゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)常務執行役員 有沢正人氏【前編】

 連載「人事と経営のジレンマ」では、組織論・経営戦略論研究者の埼玉大学大学院宇田川元一准教授と、人材育成・採用・組織開発に関するサービスを提供するリクルートマネジメントソリューションズにて、HR領域における事業開発をリードする荒金泰史氏を連載ホストに迎えます。「事業開発×人事・組織開発」をテーマに、有識者・実践者との鼎談を実施し、経営変革の両輪を担う「事業開発」と「人事・組織開発」それぞれの役割、両部門が共同して行なうべきこと、部門をまたいでのみしかなし得ない経営変革に必要な要素とは何かを探索します。
 今回はゲストに、カゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)常務執行役員の有沢正人さんをお招きしました。前・中・後編の三編でお届けする記事の前編では、有沢さんのこれまでの経歴に触れながら、現在カゴメでどのような人事改革を手がけているのか、詳しくお伺いしました。

[公開日]

[語り手] 有沢 正人 宇田川 元一 荒金 泰史 [取材・構成] 西山 武志 [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 企業戦略 人事評価

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人事は人の一生に責任を持つ仕事。その覚悟はあるのか?

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):まず、有沢さんの現在に至るまでのご経歴について、お伺いさせてください。

カゴメ株式会社 有沢正人氏(以下、敬称略):私が初めて人事の仕事を経験したのは、新卒で入った銀行ですね。そこで人事として目覚める、決定的な出来事がありました。

荒金:それは、どのような?

有沢:人事異動や昇進・昇格の担当をしていた頃に、初めて異動を考えるチーフを任された時のことです。大きなホワイトボードに、自分が担当する300人ほどの社員の名前を張り出して、全員の異動を決めていくのですが、先輩に「この人がここに行くのはどういう意味?」「この人を動かさないのはなんで?」「この人はここに異動させて、その次にどこに行くの?」と、一人ひとりについて事細かに聞かれました。

 僕も自分なりに意図はあったものの、途中でその質問に答えられなくなってしまって。そしたら先輩から「お前は人事を辞めろ」と言われたんです。「わかってるか? 人事異動はその人の一生だけじゃなくて、その人の家族や親族にまで影響を与えるんだぞ。その責任感がお前にはまったくない」と指摘されて、ハッとしましたね。あそこが僕の、人事人生のスタートです。

 「人事は人の一生に責任を持つ仕事。その責任感がない人は今すぐ辞めてくれ」――この言葉は、転職するたびに人事部の皆さんに必ず伝えています。逆に、その責任感があるなら、人事の経験がなくても来てもらいたい。

 銀行の時も今もそうなんですが、僕の部下はもともと人事畑にいなかった人間ばかりなんですよ。人事の知識はなくても、彼らは現場を知っている。僕は、現場の苦労を知らない人間は、人事をやってはいけないと考えています。人事のスペシャリストをつくるのではなく、人事のマインドを持った人たちを社内に増やしていくのが、僕の役割だと思っているんです。

有沢正人カゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)常務執行役員 有沢 正人氏
慶應義塾大学商学部卒業後、1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行。銀行派遣にて米国でMBAを取得後、主に人事、経営企画に携わる。2004年に日系精密機器メーカーであるHOYAに入社。人事担当ディレクターとして全世界のグループ人事を統括、全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。2009年に外資系保険会社であるAIU保険に人事担当執行役員として入社。ニューヨーク本社とともに、日本独自のジョブグレーディング制度や評価制度を構築する。2012年1月、カゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメの人事面におけるグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2012年10月執行役員人事部長、2017年10月執行役員CHO就任。2018年4月、常務執行役員CHOに就任。

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