「サブスクリプションモデル3.0」への進化とは
それでは「顧客との長期的な関係性構築を基点にビジネスモデルの変革に取り組んだ事業」には、どのような事業があるのだろう。かつては、よい製品を作って店舗を通じて生活者に届ける「プロダクト型ビジネスモデル」が主流であり、企業は必ずしも顧客と直接つながる必要はなかった。しかし、近年では「サービス型ビジネスモデル」として顧客と直接つながることでより良い製品を提供しようとする事業が増えてきている。
たとえば「サブスクリプションサービス」では「データをもとに、顧客に合わせたサービスをいかに提供しつづけられるか」が重要な課題となる。また「シェアリングサービス」の場合は、顧客と顧客の需要と供給をいかにマネジメントし、マッチングさせ回転率や取引数を上げるかが重要だ。つまり、売ってくれる人と買う人という、顧客の需要とサービスの供給とのバランスが取れており、アクティブ率が高いことが望ましい。
そしてもう1つ、モノが仲立ちになるのではなく、人と人との信用でサービスが成り立つ「信用モデル」がある。事業がサービス化することによって、消費側と提供側の相互信用が重要になってくるというタイプだ。
これらのモデルが従来モデルと異なるのは、「革新的な体験を提供することによって、顧客のデータが得られ、それをもとに製品やサービスなどが改善される」ということ。このサイクルを回すことで、サービス基盤自体も拡充される。
安田氏は「様々なサービスモデルへの移行が始まっている今、その近道の1つが『サブスクリプションモデル』だと思う」と語り、「既存事業だけでなく新規のサービスや事業において提供形態をサブスクリプションにしたい、と取り組むケースが増加している」と期待を見せた。
サブスクリプションサービスは市場としても2023年には8,600億円になり、5年で1.5倍の成長率が期待できる(出典:(株)矢野経済研究所「サブスクリプションサービス市場に関する調査(2018年)」2019年4月9日発表)という。順調に伸びていく市場であり、気づけばあらゆる業界に広がっている状態だ。
安田氏は「サブスクリプションサービスで成功するためには、単なる定額制を超えたサービスを設計することが肝要である」として、「既に消費者の方が賢く先に行っており、顧客に定額制で一律に同じサービスを提供する『1.0』、利用形態や利用量に合わせて複数プランを用意する『2.0』のままでは、価値を評価してもらえない可能性がある」と語る。そして、「今後はユーザーの利用状況に合わせてサービスがパーソナライズされる双方向型、提案型の『3.0』を目して取り組んでいくべき」と訴えた。その実現には、IoTやAIなどICTの活用が不可欠であり、データをリアルタイムに活用し、より良い体験を継続して提供することが求められるというわけだ。