インタビュー 社会人が大学院で研究する意味

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管理者大量生産型ではない“研究者クラフト生産型”の教育──宇田川先生が聞く社会人大学院での研究とは?

ゲスト:埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 准教授 高端 正幸氏、准教授 石 瑾氏

[公開日]

[語り手] 高端 正幸 石 瑾 宇田川 元一 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 教育 企業戦略 MBA 社会人大学院

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政治や企業にも共通する、他者との関係性の構築不全

高端:宇田川先生は著書『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』で、望ましい解決策や方針を生み出すためだけでなく、組織の基礎体力を育てる上でも、対話が重要だと書いていますね。財政に関しても同じことが言えると思います。

 たとえば、80年代くらいまでの経済がある程度順調に拡大している時期には、それなりの企業に就職し、家族を持って、マイホームを買って退職金をもらい、“人生双六”の上がりに向かうという生活が展望しやすかったんですよね。でも、今は全く状況が変わってしまっている。けれど、社会の仕組みはその変化に対応して作り替えられていません。だから生きづらいし、税に対しても信頼感を持ちにくいんです。

 一般の人々が政治に参加し、自分ゴトとして考えながら、異なる意見をぶつけ合い、その中で1つの合意点として政策が生まれてくるという、民主主義の深化が必要です。それって、いわば対話ですよね。経済や社会が急速に変化する中で、対話によって政府と国民、国民同士の関係が深まれば、社会の変化に対応する基礎体力がつくと思います。

宇田川:政治って単なる権力獲得の話ではなく、他者とどうやって望ましい関係を構築していくかを考えるものですよね。単に数値的に安心だ、大丈夫だと言われても、政府と国民の対話がない状態で決められていたら信頼は生まれません。だから今、一人ひとりの市民に求められているのは、生きた政治関係を構築して、信頼を持てるようにすることなんでしょうね。そしてそれは企業と社員の関係と同じだと思います。

高端:そうですね。人間ってどうしても、自分が生きる社会が不安定になり、難しくなると、それをなるべく忘れようとするんですよね。自分が何とかして変えなければいけないというのは荷が重いから、「世界ってそういうもんだよね」「仕方がないよね」と理不尽な世の中を所与のものとして、いかに自分がサバイブしていくかだけを考えてしまう。でもそれでは、みんなが互いの首を絞めているだけです。

宇田川:違う角度から問題を見ることで、諦めるだけではない方法が見えてくることがあると思っているんです。僕はその点で「研究」に助けられたと思っているんですよね。

宇田川元一埼玉大学経済経営系大学院 准教授 宇田川 元一氏

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