未来に想定される“大きな変化”を前提とした成長戦略
先述のスティーブ・ジョブズの発言でもわかるように、未来に起こり得る変化を踏まえ、アップルの立ち位置を冷静に決めていたのがジョブズなのだ。ジョブズとアップルには常に未来をつくってきた側面があるが、実は、つくられる未来についてのビジョンが明確にあり、その未来の中で、どのような役割を果たすのかを考え、実行してきたのだ。
ジョブズのように、未来に想定される大きな変化を前提とした成長戦略を描くことをフューチャーバックプロセスは目指している。プロセスとはいうものの、一連の作業群というわけではなく、学習プロセスだと説明されている。「探索→ビジョン→発見」という一連の学習プロセスを何度もイテレーション(反復)するのは、さながらリーダーシップ開発におけるデザイン思考である。左脳的なプレゼントフォワード思考の慣性から逃れるためには、このようなアブダクティブ(仮説形成的)なプロセスが必要なのだ。
このプロセスに必要な要素は以下の通りである。
リソースを持つ経営幹部
なによりも資源配分の決定がその企業の未来を決める。そのため資源配分について決定権のあるすべての幹部が参加するのが望ましい。技術や業界について知見を持つ人間を加えても最低5人から最大で15人位になる。
グランドルール
いつも通りのミーティングを繰り返しても、各部署の報告など現状の議論ばかりになる。「未来はどうなり得るか」だけに絞ったダイアローグが必要である。
プロセス
ファシリテーターによって適切な問いを立て、仮説を発散し、収束させていく。収束させた仮説に対して決定を導く。
本書では、医薬品業界のグローバル企業であるジョンソンエンドジョンソン(J&J)の事例を紹介しつつ、フューチャーバックの一連の活動が紹介されている。詳細は本書に委ねるとして、概略だけ紹介しよう。